自動車の業界研究、大変革期の到来で試される「モノづくりの力」【再編マップ付き】日本経済の象徴である自動車業界は「大変革の波」を乗り越えられるか Photo:PIXTA

*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)『息子・娘を入れたい会社2022』の「親子で学ぶ注目業界『天気予報』」を転載したものです。

親世代が就活をしていた時代、人気だったあの業界は今どうなっているのか。今も日本経済の屋台骨を支える自動車業界の強みと、そんな業界に迫り始めた「大変革の波」について解説する。業界の歩みが一目でわかる「自動車業界再編マップ」も参考にしてほしい。(取材・文/ダイヤモンド社 ヴァーティカルメディア編集部 副編集長 小尾拓也)

「すり合わせ技術」で培った
優位性は揺らぐのか?

 親世代が就職活動をした1980年代、日本はバブル景気にわき、若者にとってクルマを所有することは最も大きなステイタスのひとつだった。時を経て子が就活の時期を迎える現在、若者のクルマ離れがいわれて久しい。それでも日本経済を牽引する自動車メーカーは、相変わらず就職人気ランキングの常連である。そんな自動車業界が今、大きな変革期を迎えていることをご存じだろうか。

 日米自動車摩擦に晒されながらも、低燃費・高品質のクルマづくりで世界的な評価を得ていた日本の自動車メーカー。彼らはバブル崩壊後の90年代、外資系メーカーの傘下で経営再建を図った。そしてグローバル化を推し進め、海外生産・販売を加速した。2000年代に入ると、世界で環境規制が強まる中、ハイブリッド車で海外勢に先行し、黄金期を迎える。

 コロナ禍で市場全体が縮小した20年においても、ワールドワイドの自動車販売台数でトヨタ自動車がトップになるなど、その地位を揺るぎないものとしている。

 これまでの自動車業界の強みは、独自の「すり合わせ技術」にあった。自動車関連産業のすそ野は広い。大手自動車メーカーは多数の部品メーカーをグループ内に抱える垂直統合型のサプライチェーンをつくり上げ、1台のクルマを生産するのに必要な何万点もの部品を効率的に調達。それを傘下の工場で、各分野に精通した熟練工が滞りなく組み上げていく。あうんの呼吸ともいうべき生産プロセスは、海外メーカーが真似をできない、日本の製造業の優位性を象徴する事例とされてきた。

 ところが足もとでは、その優位性が揺らぐのではないかといわれている。自動車ビジネスの新たな動きの中で、日本勢が得意としてきたハード面での差別化が難しくなってきたからだ。

●親世代と子世代でどれだけ変わった?「自動車業界再編マップ」はこちら!