つまり、勝ち負けにこだわるあまり「不適応心理」と呼ばれるメンタルの不調を招く恐れがあるのだ。そのようなメンタルの不調から脱却したい場合、スポーツを楽しむことがポイントとなる。

 岡田監督の言葉を借りるならば、「勝ちたい、勝ちたいと思ったら勝てない。自然体じゃないと勝てないんです」(『岡田監督 信念のリーダーシップ』より)ということだ。

 ただしメンタルの不調を抱えていると、スポーツを楽しんだり、自然体を保ったりすることは難しい。そこでお勧めしたいのが、武道の精神をヒントに心と体を整えることだ。

武道の精神に基づく
「自然体」の強さ

 自然体とは「気負わずありのままの状態でいること」という意味を持ち、武道全般に共通する考え方だ。

 柔道や剣道などにおいては、身体に余分な力を入れずに自然に立った基本姿勢を「自然体」と呼ぶ。武道における自然体とは、バランスよく適度に脱力した状態だ。無理な力や余分な力を使わなくても、自然体では体の安定が取れている。

 武道における自然体のメリットは、動きを柔軟に変化できることだ。安定した状態から素早く反応することができ、攻守ともにハイパフォーマンスを発揮できる。

 反対に、力みや不自然さがある状態では、姿勢の乱れや動作の遅れを招きやすい。つまり隙だらけで攻められやすく、守りも崩れやすくなる。

 武道における自然体は、あらゆるスポーツにも共通している。たとえば、サッカーでも力みは大敵だ。パワフルなドリブルが敵の守備を突破できるとは限らない。過度な力みがミスを生み、得点のチャンスを逃すこともある。一方、適度に力の抜けた柔らかいタッチのドリブルが敵を翻弄し、見事な得点につながることも多い。