力みを引き起こす原因はさまざまだが、勝ち負けへのこだわりは、体に余分な力みを発生させやすい。勝ち負けへのこだわりをゼロにするのは難しいが、武道のように自然体を意識し、まずは体の力みをほぐしてみてはいかがだろう。

 勝ち負けへのこだわりを克服するならば、武道の精神を通してマインドフルネスに取り組むこともお勧めしたい。

黙想に見る
マインドフルネスの力

 柔道や剣道では、稽古前後に「黙想」の時間がある。無言で姿勢を正し、稽古前の精神統一や稽古後の精神の落ち着きを促すのが黙想だ。

 武道における黙想は、瞑想との共通点も多い。黙想や瞑想に共通しているのは、今一瞬に精神を集中して自分と向き合う「マインドフルネス」の状態をつくり上げる点だ。そこには、他者との競争や比較、勝ち負けへのこだわりは必要ない。

 黙想あるいは瞑想を行うと、稽古の振り返り、トレーニングで得た気づき、自分のコンディションの把握などが可能になる。深く静かな呼吸法を行うことで、不安やストレスが和らいだり、あるがままを受け入れたりする心のゆとりが生まれる。

 勝ち負けに関するストレスから解き放たれ、安定したメンタルを維持できると、スポーツを楽しむ余裕も出てくるだろう。

 勝ち負けへのこだわりは、パフォーマンスの低下やモチベーションダウンを招きかねない。勝ち負けにこだわりがちな人は、武道の精神をヒントに体と心を自然体に整えることをお勧めしたい。

【参考書籍】

『岡田監督 信念のリーダーシップ』(児玉光雄著、ダイヤモンド社)