スポーツのモチベーションのひとつは「勝ちたい」という欲にある。しかし欲が強くなると、過度の力みやプレッシャーもまた大きくなりがちだ。勝ち負けにこだわるせいで、本来の力を発揮できなくなることもある。書籍『岡田監督 信念のリーダーシップ』(児玉光雄著、ダイヤモンド社)を参考に、勝利へのこだわりとの上手な付き合い方を考察する。(文/フリーライター 鈴木 舞)
勝ち負けへのこだわりが
パフォーマンスを下げる
勝利を目指すことには、メリットもある。スポーツを続けるにあたり、明確な目標を掲げると、モチベーションアップやトレーニングの効率化が期待できる。努力が実って勝利を得られた場合、自信や自己肯定感の向上につながることもあるだろう。
ただし「欲がかえって勝利を遠ざけるのだ。なぜなら欲がノイズになって、集中力を途切れさせたり、潜在能力に蓋をしてしまうからだ」(『岡田監督 信念のリーダーシップ』より)とあるように、勝利へのこだわりがもたらすデメリットも無視できない。
近畿大が行った調査でも、勝ち負けに関するスポーツ心理に関して、次のような考察がなされている。
「スポーツ選手は高い勝利への志向性を持つことによって、より良い成績を上げることが可能になるけれども、勝利志向性は同時にプレッシャーや無能感、他律性など、様々な不適応的心理をもたらす原因ともなる。そのように不適応的心理を持ってしまっている者にとっては、勝ち負けにこだわらずスポーツを楽しむことは自律性を回復し、競技を続ける意欲を取り戻すために必要なプロセスなのである」(『スポーツ選手としての心理的成熟理論についての実証的研究』/近畿大学、杉浦健著)