英国は今後の国際社会で鍵になる?今大切にすべき日英関係

 現在、日本の安全保障政策の基軸は「日米同盟」だ。しかし、中国の経済的・軍事的急拡大に対応するために、自由民主主義という「価値観」を共有する国による「自由で開かれたインド太平洋戦略」が構想された(第46回)。そして、日米にオーストラリア、インドの4カ国によるQUAD(日米豪印戦略対話)が成立した。

 今後の注目は英国の「インド太平洋」への参加だ。

 英国は、EU離脱後に「グローバル・ブリテン」という新たな国家戦略を掲げている。EUに代わる地域との関係を強化することで、英国の国際社会におけるプレゼンスを再強化しようというものだ(第228回)。

 経済的なプレゼンス強化とは、「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)」に英国が加盟することだ(第192回)。TPP加盟11カ国中6カ国(オーストラリア、カナダ、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ニュージーランド)が「英連邦」加盟国である。

 また、軍事的には、英国は米英豪による新たな安全保障協力枠組み「AUKUS(オーカス)」の立ち上げに主導的な役割を果たしている。AUKUSとは、潜水艦、自律型無人潜水機、長距離攻撃能力、敵基地攻撃能力などの軍事分野、サイバーセキュリティー、人工知能、量子コンピューターを用いた暗号化技術といった最先端テクノロジーの共同開発を主な目的とした協定だ。

 4月12日、産経新聞が、「AUKUSが非公式に日本の参加を打診している」と報じた。極超音速兵器開発や電子戦能力の強化などで日本の技術力を取り込む狙いがあるという。しかし、日本政府は、その事実はないと即座に否定した。

 日本政府内には、AUKUS入りに積極的な意見がある一方で、日米同盟がすでに存在している中でAUKUSに参加する効果があるのか懐疑的な意見もあるという。政府内で明確に方針が決まっていないということだ。

 しかし、日米同盟が存在すれば、日英の協力は必要ないとはいえない。米国と英国は得意分野が異なり、安全保障分野において、相互に補完し合う関係にあるからだ。

 つまり、日本は英国との協力から、米国とは違うメリットを得られる。そのひとつは、例えば外国のスパイ活動の防止やテロ対策のための「インテリジェンス活動」だろう。