下でもなく、上でもなく、横を一緒に走る

平尾:アウトプット(出力)ではなくアウトカム(成果)につなげるのですね。

土屋:事業の意味づけとして「受託」という言葉は使わないようにしています。受託と言うと「言われたものを作る」イメージがあって価値が低い。そうではなくて、クライアントワークとは「一緒に併走してものを作る」ことだと捉え方を変えました。

10年くらい前から「クライアントは答えを持ってない」と言ってます。答えを持っていないまま「作ってくれ」と言うので、言われたまま作るだけだと価値が低くなってしまう。実はクライアントは一緒に考えることを求めているんです。

下にいる受託でもなく、上からコンサルティングをするわけでもなく、同じ目標に向かって横で並走するというポジションで入っていきます。

だから「受託」とか「コンサルティング」という言葉を社内で使わないことを徹底しています。受託だと思って自己肯定感が下がっている人たちに「いや、そうじゃないんだ。本来クライアントワークだから、価値のあるビジネスなんだよ」と言っているんです。

そういうブランディングをしたんです。だから今の人材マーケットでUIデザイナーたちの価値は高いんですよね。これも別解かなと思います。

平尾:スマ―トフォンとの掛け算でデザインの価値を高めているのが面白いです。

自己肯定感が低い人は「仕事の呼び方」を変えればいい平尾 丈(ひらお・じょう)
株式会社じげん代表取締役社長執行役員 CEO
1982年生まれ。2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業。東京都中小企業振興公社主催、学生起業家選手権で優秀賞受賞。大学在学中に2社を創業し、1社を経営したまま、2005年リクルート入社。新人として参加した新規事業コンテストNew RINGで複数入賞。インターネットマーケティング局にて、New Value Creationを受賞。
2006年じげんの前身となる企業を設立し、23歳で取締役となる。25歳で代表取締役社長に就任、27歳でMBOを経て独立。2013年30歳で東証マザーズ上場、2018年には35歳で東証一部へ市場変更。創業以来、12期連続で増収増益を達成。2021年3月期の連結売上高は125億円、従業員数は700名を超える。
2011年孫正義後継者選定プログラム:ソフトバンクアカデミア外部1期生に抜擢。2011年より9年連続で「日本テクノロジーFast50」にランキング(国内最多)。2012年より8年連続で日本における「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)にランキング。2013年「EY Entrepreneur Of the Year 2013 Japan」チャレンジングスピリット部門大賞受賞。2014年AERA「日本を突破する100人」に選出。2018年より2年連続で「Forbes Asia's 200 Best Under A Billion」に選出。
単著として『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』が初の著書。

土屋:ビジネスモデルもウェブ制作的なものじゃなくて、顧客をちゃんと選んでいます。

平尾:グノシーのデザインをされていますけれど、創業者の福島良典さんの印象はいかがでしたか?(※当該「起業家の別解力」シリーズで、平尾氏との対談を今後掲載予定)

土屋:そうですね。福島さんは当時大学院生じゃないですか。でも創業者の3人(関喜史さん、吉田宏司さん、福島さん)で頼もしい感じがしました。「もしかしたら日本からGoogleみたいなのが出てくるかもしれない」って思いましたね。