ウクライナ戦争の影響に伴い、原油価格の高止まりが続いている。株式市場への逆風と捉える向きも多いが、米著名投資家のケン・フィッシャー氏はこの見方を否定。「原油高におびえて株式から遠ざかってはならない」と指南する。その理由を解説した。
ロシア産原油の禁輸を巡る動きは
大半が象徴的なものにすぎない
既にかなり高い原油価格は、どこまで上がるのか。高騰したエネルギー価格は確かに痛手だ。米英によるロシアからのエネルギー禁輸に日本または欧州が加わるという話は、世界弱気相場と景気後退のさらなる懸念をあおる。
だが、経済的に、原油の話にはあるニュアンスが存在する。現在のロシア産原油の禁輸を巡る動向の大半は、象徴的なものだ。実際に日本が追随する可能性は低い――ロシア依存度の高い欧州も同様だ。さらに、高い原油価格は大抵、生産活動や消費の行方を変化させるものの、完全に止めるようなことはない。
確かにロシアは巨大産油国で、世界の総原油消費量の約10%を供給する。日本は原油輸入の約5%をロシアから、天然ガス輸入の9%をサハリン2プロジェクトから得ている。特に国内での代替手段不足を考えると、小さな規模とはいえない。
だが、今のところ日本の禁輸の可能性は低いと思われ、岸田首相――自身の広島選挙区はロシア産ガスに依存――は、両サハリンプロジェクトの重要性を強調する。
EUによる禁輸はより厳しい供給ショックを起こす可能性があり、さらなる世界規模での価格高騰を生じうる。EUは原油の27%とガスの41%をロシアからの輸入で得ている。これは大きい。EU首脳陣も知っている。故にドイツなどは、直近で全面禁輸の議論を取り消した。
喧伝された米英による禁輸も、おおむね象徴的なものだ。米国は原油製品の純輸出国で、わずかな輸入はロシア製品に容易に取って代わる。英国は原油の8%、天然ガスの4%をロシアから輸入してきた。少なくはないが、膨大ではない。
では、ロシアが世界への出荷を止める可能性はあるだろうか?