原油価格の高騰が続いている。オミクロン株の症例は軽症が多く、エネルギー需要に大きく影響を与えないとみられていたところに、ウクライナ情勢緊迫による地政学リスクが原油価格を押し上げている。今後も価格は高止まりしそうだ。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
オミクロン株への警戒感が後退し
2021年12月2日以降反騰
原油相場は一段高となっている。昨年12月2日に米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で1バレルあたり62.43ドル、欧州北海産のブレントで65.72ドルの安値を付けた後、上昇傾向が続いた。
すでにオミクロン株の検出が報告される前の昨年11月の高値を上回り、今年2月14日にはWTIが一時95.82ドル、ブレントが96.78ドルの高値を付けた。
相場の変動材料を振り返ると、12月2日には、OPEC(石油輸出国機構)と非OPEC産油国とで構成する「OPECプラス」の閣僚級会合で1月の産油量について従来の増産ペース通りに日量40万バレル増産する決定をした。
米国主導の備蓄放出やオミクロン株の出現を受けて増産を止めるとの見方もあったため、増産維持を受けて一時下落幅が大きくなった。しかし、声明で「感染の動向を注視し、必要ならば生産量を調整する」との柔軟姿勢を示したことなどから、結局、相場は反発した。
その後、オミクロン株の症例は軽症が多いとの報告が相次ぎ、エネルギー需要への打撃は小さいとの見方につながって、6日と7日にWTIは4.9%と3.7%、ブレントは4.6%と3.2%の大幅上昇を記録した。8日には米製薬大手ファイザーがワクチンを3回接種することでオミクロン株への高い予防効果が期待できると発表した。
しかし、英国などで新型コロナ関連の規制が強化され、オミクロン株による景気への悪影響が懸念された。9日には、格付け機関のフィッチ・レーティングスが中国の不動産開発大手の恒大集団を「一部債務不履行」と認定し、中国景気の減速不安につながった。
20日には、前日からオランダがロックダウン(都市封鎖)に踏み切るなど石油需要への悪影響拡大が想定された。また、中国人民銀行が利下げを発表すると、かえって中国景気の弱さが意識され、この日、WTIは3.7%安、ブレントは2.7%安だった。
もっとも、翌21日には、前日に米バイオ医薬品企業モデルナがワクチンの有効性を示す発表を行っていたことや前日の下落の反動から、WTIが4.2%高、ブレントが3.4%高と上昇幅が大きくなった。その後も、米当局が新型コロナ経口治療薬の緊急使用を許可したことや、引き続き軽症化傾向が確認されたことから、オミクロン株への警戒感が後退した。