小宮山・早稲田の2022年シーズンは連敗スタートとなった。自身のふがいなさにふてくされる選手もいたが、小宮山はその選手に対し、声を荒らげて説教した。なぜ、試合で喜怒哀楽を表に出してはいけないのか。インタビューや著書を通して、小宮山監督の哲学をひもといていこう。(作家 須藤靖貴)
2022年シーズンは連敗スタート
小宮山監督は負けを引きずらない
開幕2連敗――。
ここを目標に頑張ってきた部員たちに感情移入すれば、心が折れそうになる。
こういうときこそ、勝ち負けに動じない指揮官の立ち居振る舞いが頼もしい。千葉ロッテ・マリーンズ時代はエースとして厳しいゲームを何度も乗り切り、メジャーリーグのマウンドにも立った男だ。経験の豊富さ、引き出しの多彩さが違う。
開幕の法政戦の数日後、小宮山監督の背筋は伸び、表情はさっぱりとしたものだった。
「勝った負けたは監督の責任」と勝敗に関しては引きずらない。
2戦ともに采配でどうにかなるゲームではないようにも思えた。
しかし問題点をしっかりと指摘する。
2戦目に打たれた2本のホームラン。
「あれは余計な失点。投手が気を抜いている証拠。ホームランだけは打たれないように、と気を入れていれば、絶対に打たれない」
球が甘くなるのも気が抜けているから。ゲームの流れの中で、一球入魂の意識がふっと薄れるときがあるのかもしれない。そんな瞬間を払しょくするために練習を積んできた。一瞬たりとも隙を見せてはいけない。それが早稲田野球の「一球入魂」の精神でもある。指摘された投手は説得力の強さにじっとうなずいたはずだ。そして今後はそのことを肝に銘じてマウンドに立つだろう。
大事な場面でのエラーもあった。そこは怒らない。いくら気を入れても失敗することはある。失敗した選手をすぐに交代させることもしない。
「懲罰的に引っ込める、という考え方もある。でもそれはしない。その選手だけでなく、チームにとってプラスになるかどうか。ミスを取り返すようなプレーを見せてくれればいい」
「当たり前のことに、いちいち喜ぶな」
感情をあらわにする選手に監督が苦言
小宮山監督が饒舌(じょうぜつ)になったのが、選手の感情表現に話が及んだときだ。ゲーム中の「喜怒哀楽」である。