一時品薄だった新型コロナウイルス感染症「抗原検査」簡易キットの国内在庫が、1億8000万回分まで“爆増”している。それにもかかわらず、いまだに国民が手軽に入手できるものとは言い難い。一体何がボトルネックになっているのか。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
ドラッグストアをはしごしても
手に入れられない「検査キット難民」
4月上旬の週末、東京都内のある男性は新型コロナウイルス感染症の医療用(国承認)の抗原検査簡易キットを購入しようと、郊外の大手ドラッグストアに車で向かった。小学校でコロナ感染が拡大しているとニュースで知り、息子のセルフチェックに必要になるだろうと思ったからだ。
抗原検査簡易キットとは、ウイルスのたんぱく質に反応する抗体を用いて測定するもの。ウイルスの遺伝子を増幅させてその量を測定する「PCR検査」と比べて一定以上のウイルス量が必要で感度に難点があるが、15~30分ほどで結果が判明するのが利点だ。なお無症状者には使用が推奨されていない。また、感染しているのに誤って陰性と出てしまう「偽陰性」の問題も指摘されている。
男性が立ち寄った店では取り扱いがなかった。周辺の複数のドラッグストアに電話で問い合わせたが、やはり取り扱いがなかった。まさに、はしごしても手に入れられない「検査キット難民」である。
あきらめて車内でスマートフォンを操作し、大手電子商取引(Eコマース)のアマゾンで国未承認の「研究用」抗原検査簡易キットを購入した。
その後、自宅へ車を走らせたところ、偶然別のドラッグストアを発見。ダメもとで立ち寄ったところ、医療用の抗原検査簡易キットの取り扱いがあり、「備えあれば憂いなし」と、その店でも購入した。
男性は「検査キットは増産をかけたと聞いていたけど、まだ品薄なのかな?」といぶかしんだ。
しかし、である。医療用の抗原検査簡易キットの国内在庫(メーカー、輸入業者保有分)は4月中旬時点でなんと約1億8000万回分まで積み上がっている。
いったい何が、ボトルネックになっているのか。