やる気を引き出すためのメソッド2:不快な感情をやりすごす

 いったん始めたら、動くことが習慣になります。下手でも行動するのは重要な一歩です。もっとも、それ以外にも、楽に動き出せる方法はあります。

 その方法とは、「やるべきことに取りかかる前の不快さに耐える練習をする」というもの。やるべきことを先延ばしにするとき、人はそれが不快な感情、つまり嫌悪やイライラを呼び起こすかもしれないと考えてそうします。不快になりたくないから、そうした感情からも逃げたいわけです。

 しかし、そこには代償が伴います。やるべきことがいつまでも終わらないのです(目標や夢の追求よりも目先の楽しみを優先する場合はとくに)。だから、不快な感情から逃げるのではなく、その不快さに耐える練習をしましょう。気分自体は一時的なものだから、じきに消え去ります。

やる気を引き出すためのメソッド3:好きな感情にフォーカスする

 大学の学部生だったころ、学術論文を大量に読まなくてはいけませんでした。その多くは単調かつ複雑で、最初の年は、机に積み上がった論文の山を見てげんなりしたものです。

 当時のわたしにとって、論文は単位のためにしかたなく読むもので、病気のときにしぶしぶ飲む薬とたいして違いませんでした。

 ところが、その後、研究者としてメンタルヘルスの問題と向き合うようになり、論文を読むことの本当の意味がわかり始めました。不安や抑うつが人の人生にどんな影響を与えるか、優れた対処法にどれほどの力があるかを知り、見方が変わったのです。心の悩みや問題を抱える方々とじかに話すようになってから、科学の記事は単に「仕事柄、読む必要があるもの」ではないことに気づきました。それは健康と幸せを、良き人生とその意味を見出す鍵だったのです。

 わたしは論文をむさぼり読みました。答えは科学にある、そう確信しました。人生の主導権を人々に取り戻す方法を見つけようと研究者が費やすあまたの時間に、その研究に協力してくれる世界じゅうの何千、何万の被験者に答えはある。そう思ったから、たくさんの論文を読みました。