この体験をお話しするのには理由があります。やるべきことを前にしたとき、または読むべき書類の山や、埋めなければならないエクセルの表をただ目にしただけでも、わたしたちは自分自身を袋小路に追い込み、可能性に制限(リミット)を課してしまいます。

 でも、それと同時に感じているほかの感情について考えだすと、状況は変わり始めます。やるべきことが「退屈」で「嫌」だ、という感情から、別の感情――「新しいことを学びたい」という欲求や、「キャリアアップしたい」という願望など――に意識を向け直すのです。これは、あなたのモチベーションに大きな影響を与えます。嫌な感情を意識する代わりに、好きだと思える感情にフォーカスするのです。

先延ばしグセを克服する、「科学的に正しい」3つの方法とは?オリヴィア・リームス ケンブリッジ大学の研究者。おもな研究テーマは、不安や抑うつをはじめとした、心の健康にかかわる問題。BBCラジオ・ケンブリッジシャー、BBC4「ウイメンズ・アワー」、米国公共放送NPRなどに出演、英国内外の出版物に記事も寄せている。TEDトークは大きな反響を呼び、現在までに500万回以上視聴された。本書が初めての著書。 Photo by Lloyd Mann

 あなたやわたしのなかには、いつでも使える感情の庭のようなものがあります。この庭は豊かで、ネガティブな感情もありますが、願望や好奇心を素とするポジティブな感情も含んでいます。このポジティブな感情を活用すると決めたとき、わたしたちは、感情の波に抗うのではなく、その波に乗って泳ぎだします。

 わたしの場合もそうでした。自分の仕事がもたらしてくれるもの、つまり、だれかを助けられる喜びに目を向けたとき、ものごとが良い方向に転がり始めました。それでもやっぱり、仕事がつらいと思う日はあります。目的意識を持っていても、同じテーマの論文を何週間も読んでいると、さすがにうんざりしてくるときはあります。

 では、そうなったらどうするか。休みを取り、おもしろそうな本の抜粋を読むのです。こうすると、自分のなかの火をまた燃え立たせられます。自分の仕事の意味を、研究の点と点をつなぎ合わせる楽しさを、知らなかったことを発見する喜びを思い出せます。

 そうして新たなマインドセットを得て、仕事に戻るのです。「好奇心」というマインドセットを。

訂正 記事初出時より以下の通り訂正します。

「やる気を引き出すためのメソッド2:不快な感情をやりすごす」の転載内容が誤っていたため、正しい内容に差し替えました。
(2022年5月12日19:45 ダイヤモンド編集部)