繰り返しになるが、FRBは5月に異例の0.5%幅の政策金利引き上げを実施し、6月、7月にも同幅の政策金利の引き上げを示唆している。さらに、FRBのバランスシート縮小を進める(債券に対して強い売り要因となる)意向を示している。

 一つには、この引き締めのペースが速すぎて市場にショックが発生する可能性がある。また、インフレの抑制で成果が出るには時間が掛かるはずなので、さらに追加的な金融引き締めが行われて、「引き締め過ぎ」に陥るリスクがある。

 率直に言って、FRBは「前のめりで、焦っている」と感じる。

 FRBにとって現在の米国のインフレの昂進はそもそも想定外だった。資源価格の上昇が想定以上だったことと、コロナ対策として行われた大規模な財政政策の効果を甘く見ていたのだろう。

 加えて、近い過去に現在のようなインフレの例はない。現状はFRBにとって「手探りで試しながら」の金融引き締めだ。FRBとしては早く成果を出したいだろうが、物価の抑制に対して利上げに「即効性」はないはずだ。金利が上昇して経済活動が抑制されて初めて物価の上昇圧力が弱化する理屈だ。

 金融引き締めは、いずれは効くことがはっきりしている点で有効な経済政策だが、希望する時期に合わせて効果を出せるような手段ではない。

 そして、現在のFRBは「どのような政策が、どのような効果をもたらすか」について確信を持っているわけではなさそうだ。

FRBの金融引き締めは
専門家にも加減が分からない局面

 米国の庶民にとって、また今年後半に米中間選挙を控える政権として大きな問題は物価の上昇だ。

 米国の物価上昇には二つの要因がある。一つはウクライナ紛争に伴うロシアへの経済制裁などが影響している資源や食料などの価格上昇であり、もう一つは米国のコロナ対策の「金融緩和+財政支出」が効き過ぎて景気が過熱していることだ。