条件(2)
雇用が悪化したとき

 一方、FRBには「物価の安定」と「雇用の最大化」の二つの目的が与えられている。雇用情勢が明らかに悪化する局面になると、インフレ抑制のための金融引き締めを中止ないし減速する可能性がある。

 現在(4月時点)の米国の消費者物価上昇率は8.3%(対前年同月比)、失業率は3.6%だ。失業率はめどとされる4%を下回っていて十分に低いのだが、これが反転して明らかな上昇に転じた場合には、FRBが利上げのペースを落とすことを検討する可能性がある。

 しかし、(1)、(2)の2条件は、いずれも経済活動全体が減速することによって生じる事態なので、直ちに実現するものではなさそうだ。

条件(3)
金融システムに不安が生じたとき

 他方(3)は、金融機関の経営の失敗や資金繰りの悪化、社債市場の急激な状況悪化による企業の破綻などによって突発的に生じる可能性がある。

 こうした状況が起こった場合、FRBは金融引き締めのペースを落とすだろうし、場合によっては引き締めから緩和に態度を変更する可能性もある。

(3)の事態が起こる可能性は、経済統計を眺めていても兆しを見つけにくいだろう。だが国債の利回りと共に社債の利回りも上昇しており、資金に窮する企業が出る可能性はゼロではない。その際、金融機関も影響を受ける可能性がある。

 ただし、リーマンショックの教訓を得て、金融機関の自己資本は厚くなっている。そのため、金融システムの不安として認識されるような大手金融機関の経営の行き詰まりは、かつてよりも起こりにくい。