大規模な予算編成を提言
経済安全保障の確保も念頭

 第2項目では、まず、「我が国の政府支出の伸びが、国際比較で低水準なことが経済成長しない要因となっている」と、クレディセゾン主任研究員の島倉原氏による財政支出の伸び率と経済成長率との相関関係の分析結果を引用して、指摘を行っている。

 経済成長を考えるのであれば、財政支出を拡大することは必須ということであり、「生産性を高める分野への『賢い』投資をすることはもちろんであるが、投資額を充分な規模にできるよう、当初予算を大幅に拡充すること」として、近視眼的にすぐに成果が出そうなものばかりに選択的に投資をするのではなく、また、後から補正で追加するのではなく、最初から大規模な予算を編成すべきであることを提言している。

 また同項目では、予算単年度主義の弊害の是正についても触れており、「予算単年度主義にそぐわない重点分野、成長分野については、その弊害を是正するとともに、概算要求基準(シーリング)を適用しないこと」としている。

 ただ、この予算単年度主義の弊害の是正については、注意を要する。この提言では中長期的な視野に立った計画的かつ大規模な歳出を可能にすることを意図しているが、政府の文書においてこの表現が使用される場合は真逆の意味で使われている可能性がある。

 事実、5月16日に開催された令和4年第6回経済財政諮問会議において説明された「今後の経済財政運営について(有識者議員提出資料)」においては、「年度末の『予算消化』の慣行など財政単年度主義に起因する弊害についても、年度を跨いだ柔軟な執行の中で無駄を排除すべき」との記載があり、同提言とは真逆の意味、すなわち、さらなる緊縮財政を進めるために予算単年度主義の弊害を是正すべきという意味で使用されている。

 第3項目以降では、昨今のわが国を取り巻く環境の変化を踏まえて、特に経済安全保障の確保を念頭に置いた、歳出拡大の具体的な方向性について提言されている。そこにはわが国国民・産業にとって必要不可欠な物資の国内における安定供給はもちろんのこと、エネルギーや食料の国内確保も記載されている。