最新TDIは、マイルドハイブリッドではなくても十分なパフォーマンスが確保されている。これなら、コストをかけないほうが賢明に違いない。

 TDIの車両重量は1460kg。eTSIの1L車より150kg、同1.5L車比では100kg重い。車検証によると前軸重が910kg、後軸重が550kgとややフロントヘビーとなっている。

 試乗開始後すぐに、ディーゼルとは思えないほど静かで滑らかな走りに驚いた。旧型ゴルフ7のTDIは、いかにもディーゼルっぽい音と振動が感じられた。それを思うと、隔世の感がある。車内で感じる音や振動は、ガソリンのeTSIと大差がない。

 欧州では“ディーゼルはもう過去の技術”扱いになったのかと思っていた。しかし、こうして完成度の高い最新のディーゼルに触れると、まだまだ可能性があるように感じる。

すべてにチャレンジング!
高い完成度で未来に向かう

 ゴルフ8はハンドリングもいい。動きが素直で一体感があり、トラクションも十分に確保されている。イメージしたラインを正確にトレースできる。フロントの重さを意識させられるシーンもない。おそらくこれには巧みなブレーキ制御が活用されているはず。各輪を個別に適宜制御して、走行ラインを整えていると思われる。

 TDIは、eTSIのR-ラインで感じられた乗り心地の硬さも払拭されていた。リアサスペンションが全車4リンク式という点はTDIの特徴のひとつ。その効果で、燃料タンク容量は51Lが確保された。

 スタイリングはエアロ志向。一見してゴルフとわかるが、従来とは少々異質。フロント回りがガラリと変わり、これまでよりも低くワイドになって、BEVのIDシリーズに通じるフラットなデザインでまとめられている。

 ボディサイズは全長×全幅×全高4295×1790×1475mm。旧型比で30mm長く、10mm狭く、5mm低くされたのも空力のため。Cd値は従来の0.30から0.275へと1割近く向上したという。わずか10mmとはいえ全幅が1800mmを切ったことも、日本では大いに歓迎されるに違いない。

 インテリアは新鮮な印象。一気にデジタル化された。眼前に並ぶ大きなディスプレイは表示内容も斬新で、タッチの仕方でいろいろな機能を操作できる。ただし、いささか先を行き過ぎた印象もある。デジタルネイティブならすぐに慣れるのかもしれないが、相応の習熟が必要である。即座には使いこなせない。

 コンパクトなDSGのセレクターは好印象。誤操作の心配はない。インテリアはセンターディスプレイをドライバー側に傾けたり、加飾パネルやアンビエントライトを充実させるなど、きめ細かい配慮が行われている。デザイン面でもこれまでにないアイデアにチャレンジした成果が見て取れる。