物質収支でも流出を示唆か

 焼却炉からの放射性物質の漏えいを示す裏付けがもう一つあるという。

 それは試験焼却時の物質収支である。今回市民による調査でおもに検出された放射性セシウム137のみで試算する。

 静岡市などの資料によれば、試験焼却では市内の一般ゴミに大槌町の木くずを1割程度混ぜておこなった。このとき焼却炉に投入された放射性セシウム137の総量は単純計算すると129万ベクレルとなる。内訳は、一般ゴミのセシウム137は1キロあたり4ベクレルで270トンだったので放射能量108万ベクレル。また大槌町の木くずのセシウム137含有量が1キログラムあたり7ベクレルで30トンあり、21万ベクレル。試験焼却によって放射性セシウム137は市内のゴミに対しておよそ2割増となった計算になる。

 では、試験焼却後にそれがどうなったのか。排ガス側に流れる飛灰にはセシウム137が1キロあたり96ベクレル含まれていた。これが9トン捕集されたというから、86万4000ベクレル。炉の下に落ちる焼却灰は同21ベクレルで32トンであり、67万2000ベクレル。これらを合わせると計153万6000ベクレルとなり、投入量より多くなってしまう。これは測定した濃度にムラがあるためだ。

 とりあえずそのまま試算を進める。静岡市は試験焼却は最初の2日間で、最後1日は焼却灰を約1500度の高温で溶かす「溶融処理」の試験をしている。その結果、排出される、焼却灰が高温でガラス状に固まった溶融スラグは定量下限未満(定量下限値は1キロあたり8ベクレル)で、18.33トン。

 仮に定量下限値で試算すると14万6640ベクレル。溶融飛灰が1キロあたり160ベクレルで1.38トンなので、19万3200ベクレル。金属が固まった溶融メタルが定量下限未満(1キロあたり4ベクレル)、1.87トンで同7480ベクレル。溶融不適物も定量下限未満(1キロあたり6ベクレル)、3.18トンで同1万9080ベクレル。これらを合わせると計36万6400ベクレル。

 焼却炉に投入したセシウム137の総量129万ベクレルと比較すると、90万ベクレル以上が行方不明となっている。

 同ネットワークの野田隆宏氏(仮名)は今回の試算から「焼却温度が800度程度のストーカ炉ではあまりセシウムが減っていなくて、1500度の灰溶融でいきなり100万ベクレルくらい減った。これは灰溶融の高温で塩化セシウムが揮発したためではないか」と指摘する。

 野田氏は以前に静岡県島田市での試験焼却時に物質収支に加え、集じん装置の入口濃度と出口で捕集された溶融飛灰の放射能量から除去率を推計し、2012年3月の環境省交渉で「物質収支から算出されたセシウム137の除去率は65%で、排ガスの分析から算出された除去率は53~62%。バグフィルターによる除去率は60%程度であり、約4割が外部に漏れている可能性がある」と発表した。このときの経験をふまえて、こうも話す。

「島田市も高温溶融炉を採用していた。高温による処理のほうが放射性セシウムがバグフィルター(などのろ過式集じん機)を抜けて外部に流出しやすいのではないか」