「本日私は1つの特別な問題について思案してみたい。それは単純な疑問である。なぜリーマン・ブラザーズの破綻を許したのか?」「リーマンの破綻は避けられたはずだし、避けるべきだったということは明快に思われる。これは単に事後的な評価ではなく、事前の評価もそうである」
ECB(欧州中央銀行)のスマギ理事は10月20日の講演で米政府の対応を批判した。
「(昨年夏以来)何ヵ月も続いてきた“信頼の危機”において、たとえ中堅サイズの銀行でも破綻させれば、その影響は伝染し、金融システムから逃避が起きる引き金となってしまうことは明らかであった」。
中央銀行幹部が他国の政策対応に公式の場で不満を述べることは珍しい。
確かに、リーマンの破綻がなければ、欧米の金融当局は、各国中央銀行が実施してきた流動性供給を「時間稼ぎ」に利用しながら、金融システムの健全化を徐々に進めていくことができただろう。
しかし、リーマンショックの後は、欧州も含め世界の金融市場の様相が激変した。米政府がそれでもリーマンを破綻させてしまった意思決定メカニズムに関してスマギ理事は興味深い分析を行なっているので紹介してみよう。
状況から判断すると、リーマン救済に反対する意見は、政権内だけでなく、議会、世論にもあった。