ウォルマート、ロウズ、TJXの米小売り大手3社では今春、人工妊娠中絶の権利に関する提案が株主総会に提出された。来年にはさらに多くの企業で同様の動きが広がる可能性がある。
こうした動向により、ブラックロックやバンガード・グループ、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズなど資産運用大手に圧力がかかっている。数百万人の投資家を代表して、小売り大手3社を含めた企業の株式を相当数保有しているためだ。
物言う株主(アクティビスト)は昨年12月に株主提案を提出していた。概して人材の雇用・維持など、中絶の権利を制限することに絡むリスクとコストを評価する報告書の策定を求める内容だ。背景には、中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」が覆される可能性を示唆する連邦最高裁判所の意見文書が流出したことがある。
トリリウム・アセット・マネジメントはTJXに、クリーン・イールド・アセット・マネジメントはウォルマートに、それぞれ株主提案を提出した。両社ともESG(環境・社会・企業統治)を巡る懸念を重視する立場だ。ロウズには民間基金「エデュケーショナル・ファンデーション・アメリカ」が株主提案を提出した。同基金は非営利団体への助成やESGを重視した投資を行う。
ブラックロックやバンガード、ステート・ストリートなどの資産運用大手は近年、低コストのインデックス連動型ファンドに投資マネーが殺到する中で急成長を遂げている。