つみたてNISAは、主として「まだ大きな投資資金を持っていない」これから資産を形成しようとする人のために考えられた制度だ。実際、20〜40代の利用者が多い。彼らは、将来に備えて資産を形成しようとする人たちであり、「現在のお金持ち」ではない。彼らの資産形成を後押しすることは、日本の中間層の形成にも資するのではないか。

 年間84万円を20年間積み立てると、投資元本は1680万円になる。運用益を考えると、20年後の資産額は2000万円を超えていても不思議ではない。19年に「老後2000万円問題」で世間を騒がせた金融庁としては、良い罪滅ぼしになるのではないか。

 もっとも、つみたてNISA増枠を実現するに当たって真の障害は金融庁ではなく、国税庁であり財務省だ。彼らのロジックでは、税制上の優遇を与えるということは、それだけ税収が減るので、その財源を手当てしなければならないという話になる。また、「投資ができる人と、そうでない人とのメリットと負担のバランス」といった独特の正義感(?)が働いて、税制上の優遇措置を「値切りたがる」傾向がある。

 首相が「資産所得倍増」と言い、その手段としてNISA制度の改革が挙げられている以上、何らかのNISAの増枠は不可避に見える。ところが「税の力学」が働くと、つみたてNISAの増枠は「年間上限60万円」くらいが現実的なのかもしれない(「現実って、ツマラナイなあ!」)。

 しかし、どうせやるなら「倍増」プラス4万円の「親切なおまけ付き」である84万円を強く推したい。

つみたてNISA倍増が優れている理由
(2)高齢者も使える点がフェア

 現在、つみたてNISAが相対的に若い層に利用されているのは事実だが、つみたてNISAは高齢者も使うことができる。今後、高齢者がより長く働くことができる状況をつくろうとしているのだから、そうした高齢者がつみたてNISAを利用することは合理的だ。

 成人ならどのような年齢であっても平等に利用できるつみたてNISAの増枠は、メリットが広い範囲に平等に行き渡る点でフェアだ。これは、つみたてNISA「倍増」政策の第2のメリットだと言っていいだろう。