アナウンサーになろうとは1ミリも思っていなかったというTBSの井上貴博アナウンサーが、初の著書『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)を刊行!「地味で華がない」ことを自認する井上アナが実践してきた52のことを初公開している。300ページ以上にわたる本書は、テレビの最前線で培ってきた「伝わらない」が「伝わる」に変わる方法が満載だ。人前で話すコツ、会話が盛り上がるテクなど、仕事のプレゼンやプライベートの雑談でも役立つノウハウと、現役アナウンサーならではの葛藤や失敗も赤裸々に綴る。
※本稿は、『伝わるチカラ』より一部を抜粋・編集したものです。
1つだけでなく2つ3つと比べれば
さらにわかった気になる
さらに、比較するときのコツを挙げるとするなら、対象を1つに限らず、2~3個提示することです。1つだけ比較例を出されても「はあ?」という感じになるので、「かに道楽のかに」「マーライオン」と畳みかけます。そうすると、「よくわからないけど面白い」という感じになりますし、「バカなことをやっているな」とも思ってもらえます。
私は比較をするのが半ば趣味なので、事前のリサーチに命をかけています。事前に調べておけば、パンダの赤ちゃん誕生のニュースでも「誕生したばかりのパンダの赤ちゃんは100~200グラム。キウイフルーツ1個分くらいの重さです」「パンダの赤ちゃんが350グラムにまで成長しました。ちょうど折りたたみ傘くらいの重さでしょうか」などと伝えられます。
具体的な比較対象を示して
相手のリアクションを引き出す
比較対象が全然ピンとこないものであっても、いいのです。例えば、雲の高さが高度16キロメートル近くもある史上最大級の台風が近づいているとき、私は次のように伝えてみました。
「今度の台風の雲の高度は16キロメートルだそうです。16キロというのは、東京駅と川崎駅の駅間と同じくらいです」
そのときは、ホラン千秋さんが「ふーん、それで?」という、視聴者を代弁するようなリアクションをしてくれました。そこで、あえて3秒くらい間をとってから「……ですよね。やっぱり要りませんか、この情報」と混ぜっ返したのです。
このように、身近なもので比較すれば「へー」という共感を呼びますし、よくわからない比較対象を持ってくれば、笑いが生まれます。比較をすると、端的に伝わるだけでなく、相手の共感やリアクションを引き出すことができるのです。
※本稿は、『伝わるチカラ』より一部を抜粋・編集したものです。