初の著書『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)を上梓したTBSの井上貴博アナウンサー。実はアナウンサーになろうとは1ミリも思っていなかったというのだが、一体どのようにして報道の第一線で勝負する「伝わるチカラ」を培ってきたのだろうか?「地味で華がない」ことを自認する井上アナが実践してきた52のことを初公開! 人前で話すコツ、会話が盛り上がるテクなど、仕事でもプライベートでも役立つノウハウと、現役アナウンサーならではの葛藤や失敗も赤裸々に綴る。
※本稿は、『伝わるチカラ』より一部を抜粋・編集したものです。

【TBSアナウンサーが教える】伝えたいことが端的に「伝わる」ようになるたった1つのポイント

一文を短くしてダラダラ話し続けないようにする

情報を端的に伝えるため、私が意識しているのは「丸(句点)をたくさんつけながら話すこと」です。丸をつけるとは、一文を短くするということ。LINEなどでメッセージを書くとき、一文を短く区切って丸をつけ、たくさん改行を重ねていくようなイメージです。

テレビ的には、一文を短くすると、映像を編集しやすくなります。だから、一文を短くする話し方は、アナウンス研修でも指導されています。

ところが、プロでも一文を短くするのは、簡単ではありません。あれもこれも伝えたいという思いが先走ったり、話が途切れたときの「間」が怖かったりするからです。

句点(。)をつけながら話すと断然聞きやすくなる

「四角い部屋の奥に観葉植物がありまして、中央にはテーブル、手前にはスピーカーがあり、その隣にはプリンターが置いてあり……」

このようにダラダラ話が続くと、聞き手は不安になります。話がどこに向かおうとしているのかがわからなくなるからです。では、この文章に丸をつけると、どうなるでしょうか。

「ここは四角い部屋です。奥に観葉植物があります。中央にはテーブル、手前にはスピーカーが置いてあります。その隣にあるのはプリンターです」

丸の数を増やすと、話は断然聞きやすくなりました(テレビ業界では「編集点をつくる」ことにもつながります)。

早め早めに丸をつけて話す

丸をつけると、聞き手はそのタイミングで情報を咀嚼できます。聞いた情報を1つひとつ咀嚼しながら「わかった」「わかった」……と積み重ねていくことで、全体の内容をクリアに理解できるのです。

世の中を見渡すと、わかりやすい話をする人は、早め早めに丸をつけて話しています。バスガイドさんによるガイドなどが典型的です。

「右側に見えますのは東京タワーですが、東京タワーは高さ333メートルで、昭和33年に完成した自立式鉄塔で……」
「右側に見えますのは東京タワーです。東京タワーの高さは333メートル。昭和33年に完成した自立式鉄塔です」

やはり丸をつけると圧倒的に情報が明瞭になります。

すっきり話すために意識するべきこと

丸をたくさんつけるにあたっては、「が」「けど」を減らすのがポイントです。

例えば、「お茶を出していただきましたが、コーヒーがよかったです」なら「お茶を出していただきました。でも、コーヒーがよかったです」の2文に分けることができます。「が」「けど」を使いそうになったら、いったん丸を置いて文章を区切る。これを意識するだけで、かなりすっきりした話し方に改善できます。

※本稿は、『伝わるチカラ』より一部を抜粋・編集したものです。

井上貴博(いのうえ・たかひろ)
TBSアナウンサー
1984年東京生まれ。慶應義塾幼稚舎、慶應義塾高校を経て、慶應義塾大学経済学部に進学。2007年TBSテレビに入社。以来、情報・報道番組を中心に担当。2010年1月より『みのもんたの朝ズバッ!』でニュース・取材キャスターを務め、みのもんた不在時には総合司会を代行。2013年11月、『朝ズバッ!』リニューアルおよび、初代総合司会を務めたみのもんたが降板したことにともない、2代目総合司会に就任。2017年4月から、『Nスタ』平日版のメインキャスターを担当、2022年4月には第30回橋田賞受賞。同年同月から自身初の冠ラジオ番組『井上貴博 土曜日の「あ」』がスタート。同年5月、初の著書
『伝わるチカラ』刊行。