夫婦同姓は日本の伝統ではないという指摘

「特集 人生100年時代における結婚と家族〜家族の姿の変化と課題にどう向き合うか〜」は、全部で106ページからなる長文のリポートだ。

 これは前述の男女共同参画白書や、関連する厚労省などの調査を横断的に引用し、現在の状況や今後を分析している。

 個人的に興味深かったのは、「コラム2」の「歴史考察〜昭和より前の時代の、我が国の家族を取り巻く状況〜」だ。

 要約すると、ここでは「我が国」で「伝統的」と思われているものの中に、実はそうではない慣習も含まれているという指摘がなされている。人々がなんとなく「日本は昔からこうだよね」「昔は良かった」などと思い込んでいるものについての指摘である。

 たとえば、平成・令和の時代は、昭和より離婚件数が多い。しかし明治時代までさかのぼると、人口比での離婚率は今の2倍だという。また、現代では婚外子の割合が諸外国と比べて低いが、明治時代の婚外子の割合は現在の4倍(9.4%)。さらに明治時代は家制度を維持するために養子縁組が非常に多かったことが紹介されている。

 そして、こんな一文がある。

「関連して、我が国における氏の制度の変遷を見ると、平民に氏の使用が許されるようになったのは、明治3(1870)年以降である。さらに、明治9(1876)年の太政官指令では妻の氏は「所生の氏」(=実家の氏)を用いることとされており、夫婦同氏制が導入されたのは、今から124年前、明治31(1898)年の民法成立時である」

 夫婦同姓は、日本の伝統ではないという事実が明言されている。

 これは選択的夫婦別姓を求める人たちからすると、もう聞き飽きたほどの当然の史実であるだろう。しかしいまだに、夫婦同姓は日本古来の文化であり、それに背くことは伝統の破壊であるかのように言い募る人がいる。議員の中にでさえいるのが現状だ。

 このコラムは、そのような言説にやんわりとクギを刺しているように思えてならない。