事実婚で被る3つの不利益、選択的夫婦別姓で注目される「夫婦のお金」Photo:PIXTA

選択的夫婦別姓に関して報じるニュースを今年、数多く目にするようになってきました。6月に最高裁が夫婦別姓を認めない民法などの規定を合憲と判断したことで、さらに大きな注目を浴びています。夫婦が同じ姓にしないのであれば、法律婚はできません。こういった背景から、「事実婚」を検討する人もいます。では、事実婚にはどのような不利益があるのでしょうか。(社会保険労務士 井戸美枝)

事実婚には不利益があるのか?

 皆さんは「夫婦同姓」について、どう思いますか?

 多くの場合、婚姻届を出して、夫婦の戸籍を作る際に、姓を変えるのは女性です。働く女性が増えるなか、姓が切り替わって、キャリアや人脈がリセットされる問題が指摘されています。運転免許証、銀行口座、パスポートなど、名義変更にまつわる手間やコストも無視できません。実際のところ、姓を改める必要のない「事実婚」を選ぶカップルが増えているようです。

 ここで気になるのは「事実婚には不利益があるのか?」ということ。

 婚姻届を提出して同姓になる「法律婚」と、婚姻届を出さず別姓を通せる「事実婚」。どういったお金や公的な制度の違いがあるのか、ご紹介しましょう。

そもそも事実婚とは?

 そもそも事実婚とは、どういった状態を指すのでしょうか。

 事実婚は、当人同士の意思で婚姻届は提出しませんが、社会的には婚姻届を出している夫婦と同様の状態にあることを指します。お互いに結婚の意思があり、長期間にわたり共同生活しているなど、結婚している状態と同等であれば事実婚と認められます。

 また、住民票を用いて証明することができます。婚姻届を出す(法律婚)場合、住民票の続柄は、世帯主が男性の場合は、女性は「妻」。世帯主が女性なら、男性は「夫」と記載されますが、これを「妻(未届)」または「夫(未届)」と記載することで、「婚姻の意思はあるが、自分たちの意思で婚姻届を出していない」という意思を表すことができます。

 これで、自治体や各機関から事実婚と認められやすくなります。

 では、事実婚にデメリットはあるのでしょうか。ポイントは「相続権」「子どもの親権」「税控除」の3点です。順番に見ていきましょう。