メディアに悪ノリせず、調査の重要なところを知ろう

「特集 人生100年時代における結婚と家族〜家族の姿の変化と課題にどう向き合うか〜」のまとめとして掲げられている「優先的に対応すべき事項」はたとえば、「女性の経済的自立を可能とする環境の整備」や「男性の人生も多様化していることを念頭においた政策」である。

 また、「柔軟な働き方を浸透させ、働き方をコロナ前に戻さない」点にも触れられている。

 これらから受け取るメッセージは何か。高度経済成長期に「普通」「当たり前」とされていた働き方やライフスタイルはもはや過去のものとなり、男女ともに生きやすく暮らしやすい社会を求めていくためには、考え方の転換や柔軟さが求められているということではないだろうか。

 調査結果では、男性が自身の経済力を気にして結婚に前向きになれない側面があることが浮かび上がる。実際に女性は配偶者に経済力を求める傾向がいまだにあるが、一方でその背景には男女の賃金格差が今なお大きく、大卒女性の平均賃金が高卒男性と同じ水準といった事実がある。

 もはや男性の稼ぎに頼って女性が家事・育児に専念するライフスタイルは過去のものになりつつあるのだが、その一方で日本の女性の社会進出は諸外国と比べ絶望的とも言える水準だ。

 男女共同参画白書を出した内閣府が何のために調査を行っているかといえば、このような現状の打破のためであるはずである。

 なのに、マスコミが「20代独身男性“4割がデート経験なし”」という側面だけを切り取り、面白おかしく消費され、一部では既存の価値観の上塗りに使われていく状況が、2022年の日本である。そろそろ悪ノリや冷やかしよりも良識を求めたい。

※ちなみに、この報道についてはすでに窪田順生氏による『「若者の恋愛離れ」というインチキ話を政府・マスコミが蒸し返し続けるワケ』(6月16日)という論考があるので、そちらもご参照いただきたい。