米JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOが、「投資家は経済のハリケーンに身構えるべきだ」と警告した。ここでいうハリケーンとは、物価上昇と景気後退、金融市場の不安定化といった未曽有の混乱のことだ。米国ではそうした状況に身構えて、守りを固めようとする大手企業や金融機関のトップが増えている。世界経済の先行きに過度な楽観は禁物だろう。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
米国大手金融機関や企業のトップが
先行き懸念を表明
「世界経済に“ハリケーン”が直撃する」。最近、そうした不安を口にする人が増えている。ここでいうハリケーンとは、世界的な物価上昇に加えて、主要国の金融政策の転換などによって景気が後退すると同時に、株式や為替などの金融市場が大きく不安定化する状況を指す。米国大手金融機関や企業のトップが、「ハリケーンに襲われたような混乱が米国内外で起きそうだ」と懸念を表明しているのである。
米FRBや欧州中央銀行(ECB)がインフレ退治に傾注し、金融引き締めへ転換している。米中の対立やウクライナ危機などによって、世界経済は脱グローバル化し始めた。それに伴い資源や穀物などの価格が上昇している。
米欧の中央銀行は金融政策を、近年の世界経済と金融市場を支えてきた「超低金利環境」と「流動性供給」から、「利上げ」と「量的引き締め」(QT、バランスシート縮小による流動性の吸収)に急転換している。米国ではQTと追加利上げが同時に進み始めた。
当面の間、世界の金利は上昇し、経済の成長率は低下するだろう。一方で、物価上昇率は高止まりした状況が続きそうだ。高物価&景気停滞の中で金融市場がかなり不安定に推移するという、近年経験したことのない状況に世界が向かっている。