トヨタ最大の減益要因は資材高騰1兆4500億円
お家芸の原価低減ではカバーできない
トヨタ減益の理由は、決算説明会資料を見ると一発で分かる。資料後半部分に「連結営業利益増減要因」のページがある。
トヨタの営業利益は、22年3月期の2兆9956億円から23年3月期予想の2兆4000億円へ激減する見通しだ。説明会資料には、その約6000億円の「ギャップの理由」が詳しく記されている。
もっとも足を引っ張る要因は「資材高騰」で、1兆4500億円もの減益要因となる見通しだ。世界的なインフレがトヨタを直撃しており、お家芸である年間3000億円の原価低減効果をもってしてもその減益額をカバーすることは難しい。
また、トヨタがインフレの影響をまともに受ける原因はその業容の広さにもあるが、それだけでは説明できない。
これまでトヨタは、自由貿易を前提に部材のサプライチェーンの海外シフトを積極的に進めてきた。そうすることで、強靭で安価な調達体制を築いてきたのだ。だが、米中対立が深刻になった18年頃から、その前提とされてきた国際ルールは激変した。
自由貿易から保護主義へ。主要国は希少材料や基幹部品の囲い込みに走っており、トヨタが注力する電動車に不可欠な電池材料や半導体などの資材高騰は長期化の様相を見せている。トヨタが最適なサプライチェーンの構築にまい進してきたが故に高い壁にぶち当たっているともいえるのだ。
表向きは盤石に見えても、実は潜在リスクを抱えている――。そうした企業の「課題」をいち早く発見する“手助け”となるのが決算書だ。決算書をじっくり読み解けば、日々流れている企業・産業のニュースの裏側を知ることができる。