要因(3) 予想される今夏の異常気象

 日本にはなじみのない「熱波災害」ですが、実は2020年代に世界中で増加すると予測されています。日本でも、今世紀に入って熱中症の死者数が増加しています。1980年代までは熱中症の死者数は毎年ほぼ二ケタで、最大でも150人程度でした。それが2000年以降は毎年200人を超え、2010年、2013年に1000人を超えました。

 熱中症死は、2018年以降毎年コンスタントに1000人を超えるようになり、現在に至ります。そして極端に暑い夏というのは4年から7年に一度の周期で訪れるのですが、どうやら今年の夏はその暑い夏にあたりそうなのです。

 地球規模で見ると、熱波災害はアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなどで頻繁に報道されるようになってきています。中でも2003年のヨーロッパの熱波災害は記録的で、フランス国内では1万5000人が熱中症で亡くなりました。

 熱中症で亡くなるのはその8割が高齢者です。それも夜間、部屋の中で熱中症にかかる例が比較的多いのです。

「今日はどうにも寝苦しい」と思っていると、気づかないうちに室温が30度にまで上昇していて、夜間に脱水症状を引き起こすようなことが起きるのです。

 そうならないようにするには、夜でも扇風機やクーラーをしっかりとつけておくことが大切なのですが、ここがこの夏は難しい。高齢者は年金も減っています。前述の「節電ポイント」を利用して、節約に協力しようという人が少なからず出てくるでしょう。しかし、一つ間違えると命にかかわる結果につながりそうです。

岸田首相の「節電ポイント」は面白いが、電気代爆上がりが不可避な理由本連載の著者、鈴木貴博氏の近著『日本経済 復活の書 2040年、世界一になる未来を予言する』(PHPビジネス新書) 22年6月16日発売

電力の「不足・値上がり・節約」に
日本は慢性的に襲われ続ける

 ここで私たちが覚悟しておかなければならないのは、この電力不足と値上がり、そして電気の節約は今年の夏だけではなく、これから長く長く日本を襲う現象になりそうだということです。残念ながら、2050年に世界がカーボンニュートラルを達成するまで、政府の要請が止まることはないでしょう。

 より根本的には原発の再稼働が不可避だと思うのですが、ここにも問題があって、つい先日、最高裁が福島の原発事故について「国に責任はない」という判決を下しました。

 国の責任なしという判決が出たことで、司法への不信感も重なり、原発再稼働の反対論はますます大きくなりそうです。

 しかし、電力問題を本当の意味で解決するためには、この「原発という存在を認めるか認めないか」という国民を二分する問題に対して答えを出すしかありません。

 この点は、拙著『日本経済復活の書』でも一番力を入れて議論している点です。興味のある方はぜひ本もお読みいただければと思います。

 いずれにしても電力の問題は、これから長い期間、わたしたちの頭を悩ませる大問題になりそうです。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)