生産能力縮小によるコスト削減や鉄鋼の値上げで業績が回復する日本製鉄。国内製鉄事業の動向に注目が集まる同社だが、実はその利益の3分の1は「別の収益源」が支えている。特集『決算書100本ノック!2022夏』(全21回)の#14では、その構図を決算書から読み解く。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
日本製鉄の業績が復活した理由
強気値上げと生産能力削減が奏功
日本製鉄の業績が復活している。新型コロナウイルス感染拡大前の2020年3月期は、事業利益が2844億円の赤字に落ち込んだが、22年3月期は一転、過去最高となる9381億円をたたき出した。
好業績の要因は、直接的には長年低迷していた国内製鉄事業の改革が功を奏したことが大きい。
一つは、トヨタ自動車を筆頭とする大口顧客向けの「ひも付き」価格で、大幅な値上げを断行したことだ。「世界一高品質だが、世界一安値」とやゆされる国内の鋼材だが、原料炭などの原料価格の高騰は限界を超えている。21年以降、原料高騰の価格転嫁とともに、付加価値に見合うマージンを獲得する強気の交渉を進めてきた。
さらに、その前提として「買いたたき」を生む元凶だった余剰生産設備を削減。粗鋼生産能力で年間1000万トンを減じる大リストラを断行し、固定費削減も行った。まさに不退転の決意である。
そのかいあって、長年赤字に沈んでいた国内製鉄事業の中核である単体の営業利益が大幅に回復、全体の利益を押し上げた。規模の大きい国内製鉄事業の改革が全体の業績の行方を担うのは、当然ではある。
だが実は、日本製鉄の業績を読み解く上では外せない収益源が二つある。
次ページでは、日本製鉄の好業績を陰で支えた「二つのポイント」と、そこから見える同社の事業戦略について解説する。