決算書100本ノック2022夏#16Photo:JIJI

NTTが完全子会社化したNTTドコモの手元資金が急増している。だが、ドコモがせっせとため込んだ資金はいずれ親会社のNTTが奪取することになるだろう。『決算書100本ノック!2022夏』の#16では、その巧妙なメカニズムを解き明かす。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

「週刊ダイヤモンド」2022年6月25日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

NTTグループ再編で
ドコモのキャッシュが急増

 初の純利益1兆円突破――。NTTの2022年3月期決算でトヨタ自動車に次ぐ最終利益をたたき出した最大の要因は、20年12月のNTTドコモの完全子会社化にある。外部株主に流出していた利益を通期分取り込み、純利益を前期比で1600億円押し上げる会計上の効果があった。

 もっとも、NTTのグループ再編が実際のもうけを表す営業利益に貢献するのはまだ先になる。NTTグループでは、ドコモとNTTコミュニケーションズの統合に続いてNTTデータの海外再編も予定しているが、いずれも本格的なシナジー発揮は25年度(26年3月期)以降になる計画だ。

 一見してNTTは「グループ再編効果」をまだ生み出していないように見える。だが実は、決算書をつぶさに読み込むと、再編の影響が顕著に表れた数字が浮かび上がってくる。それが、足元で急増しているドコモの手元資金(キャッシュ)だ。

 次ページでは、ドコモのキャッシュが増えた理由を解説する。いずれそのキャッシュはNTT(持ち株)が吸い上げていくことになるのだが、その資金奪取のメカニズムについても明らかにしていく。