ニューヨークのマンハッタンにあるアップルストアPhoto:PIXTA

アップルのビジネスモデルの優位性が揺らいでいる。同社の業績への懸念が高まり、米国にあるアップルの小売店舗では労働組合が結成された。アプリストアに関しても、多くの国がアップルにストアを抱え込むのではなく、外部に開放するよう求めている。各国の規制当局がアップルのシェアをそぎ落とし、データの保護や自国企業に有利に働く環境整備を強化している。一方、アップルがメタバースに対応した「眼鏡型のデバイス」を発表するとの観測が高まる中で、クックCEOは新型の「M2チップ」を発表した。アップルが描く、ウェブ3.0の大激変期を生き抜く新しいビジネスモデルとは。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

アップルが新型の「M2チップ」を発表
変革期におけるその狙いとは

 世界のネット業界が大激変期を迎えている。主要国の規制強化に加えて、アップルなどが主導してきた「ウェブ2.0」から、次の「ウェブ3.0」へ様変わりしつつある。その変革で、私たちとデジタル空間の距離感は一気に縮まり、新しいサービスやデバイスの需要が増える。

 他方、スマートフォンなどの需要が飽和し、中国のゼロコロナ政策による供給制約やウクライナ危機による資源価格高騰が深刻化したことで、アップルのビジネスモデルの優位性が揺らいでいる。同社の業績への懸念が高まり、米国にあるアップルの小売店舗では労働組合が結成された。

 そうした状況下、アップルは新しいビジネスモデルの確立を急いでいる。それを示唆するのが、チップ開発の加速だ。メタバースに対応した「眼鏡型のデバイス」を発表するとの観測が高まる中で、クックCEOは新型の「M2チップ」を発表した。その狙いは、より高性能なチップ開発を加速し、より多くの人が能動的に活動できる、新しいネット空間を整備することだろう。

 アップルは人々がより積極的に新しい取り組みを進めてモノやサービスを取引するバーチャルな市場を整備し、その運営を多種多様な企業と連携して進めようとするだろう。このことが半導体部材メーカーおよび製造装置メーカーの事業運営や、米中対立に与えるインパクトは大きい。