つまり、死亡届でワンストップサービスが提供できるようになる以前に、基本的なデータ整備の部分で相当な壁が存在しているということになります。国としては、2025年までには制度の改正やデータ構造の設計を進め、2030年までにはデータをきれいにしたいと考えているとのこと。平本さんは「ちょっと時間をとる戦略ですし、遅いと思われるかもしれませんが、実はアメリカでもヨーロッパでも、2030年までのデータ整備を目指していて、日本だけが特に遅いというわけではありません」と説明しています。
実際にデータ整備やワンストップサービスが2030年に実現するためには、たとえば我々が積極的にマイナンバーカードを取得し、きちんと使うかということなども連動する話だと思います。私も昨年マイナンバーカードを取得し、作るまでは「別にそれほど使うこともないだろう」と思っていたのですが、作ってみたらやはり便利なものでした。もし個人個人がマイナンバーカードを取得し、活用することで、日本がデジタル国家に近づくのであれば、率先して作って使いたいと思いますし、周りの人にも勧めたいところです。
データ整備は250年先を見据えた
日本を担う未来のインフラづくり
戸籍(除籍、改製原戸籍)は、除籍となって戸籍が閉じられた年度の翌年から150年間、保存しなければならないと法律で定められています。平本さんは「今の日本の基本制度は150年前の明治の時期に骨格が決まったものが多いです。また、今生まれた人が100年ぐらい生きるとすると、亡くなってから150年除籍簿を保存することになるので、250年後にも使えるデータを保証しなければなりません。これは、私たちの子孫がデータ活用できないということにならないように、文化を大事にしつつ、いかに変換していくべきかを考える、400年規模のプロジェクトなのです」と語っていました。
日本では戦後、焼け野原からの復旧復興の際に、道路や橋梁、鉄道などのインフラが必要とされました。今でも日本はそういう公共工事のような分野を得意としていますが、未来の日本に必要となる道路や橋梁にあたるインフラは、デジタル庁が今手がけている、こうしたデータ整備の分野になるのではないかと思います。
私の父は私が20歳ぐらいの頃に亡くなっていますが、土木設計技師で、日本の重要な道路なども作ったと教わりました。それは私にとっても誇りであり、自分でも同じようなことをやりたいと考えたこともあります。ですから、平本さんの「今後のデジタル社会におけるインフラを、未来のために作っている」という話には、非常に共感するところがありました。
(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)