昔なら60歳ぐらいが定年で「庭仕事でもしていてください」というような感じでしたが、人口減少が進む今の日本では、バリバリ働かなければならない世代です。こうした人たちが非効率な手続きに時間を費やさなければならないというのは、実に非生産的なことです。
また先述したとおり、公的サービスの担当者の方は皆さん大変親切で、詳しく説明してくださいましたが、本来「そこはもう人がやらなくてもいいよ」ということまでやっているのだとすれば、彼らの生産性という意味でも無駄遣いになっているのではないかと思うのです。届け出からの処理がきれいにデジタル化されていたならば、それで十分だったはずのところができていないという点に、大変課題を感じます。
デジタル庁データ戦略統括に聞く
「死後の手続き」がここまで大変な理由
この課題感を、デジタル庁データ戦略統括の平本健二さんにぶつけてみることにしました。平本さんはデジタル庁に入庁する前は、内閣官房IT総合戦略室の政府CIO上席補佐官や経済産業省のCIO補佐官などを務めていた方です。私とは以前、オープンデータに関するプロジェクトなどで何度かご一緒したことがあります。
平本さんによれば、私が苦労した戸籍や住民票など、個人の出生や死亡の届け出手続きについても、デジタル庁は「ワンストップサービス」という枠組みで取り組みを進めているということでした。ただ、個人の手続きはどうしても個人情報と密接に絡んでおり、なかなかすぐにはそこに切り込めない事情もあるのだそうです。
そこで、いずれは個人の手続きを手がけるとして、まずは個人よりはもう少し扱いが簡単な法人や不動産情報のデータハンドリングから攻めているという話でした。それはそれでもっともなことだと私も思いましたし、実は「法人でさえデータハンドリングは大変だ」ということを平本さんからはうかがっています。