世に出ているビジネス書や自己啓発本などの多くは、ライターが関わって制作されている。ライターと編集者が著者にインタビュー取材を行い、ライターが原稿を書き起こして、これに著者が手を入れて原稿を完成させるのが大まかな流れだ。筆者が著者の書籍でも、何冊かはライターが介在している。

 ところで、ライターの業界には不思議なミスマッチ現象がある。

 一般にライターの志望者は多く、彼らは「なかなか仕事がない」との悩みを持つ。他方、出版社の編集者および著者の側では「いいライターがなかなかいない」との悩みを持っている。筆者は1年に複数の単行本を出していて、普通の人よりもいくらかは出版業界の事情に詳しいはずなのだが、正直なところ、ライターの数が過剰なのか過小なのかがいまだに分からない。

 ライターの需要側、つまり編集者や著者の側からすると、取り上げるテーマについて十分な知識を持っていて、かつ本を書くに十分な国語力・文章力を持ち、同時にライターの仕事に意欲があり、納期その他が信用できる人材が少ないのだ。

 身もふたもない話だが、専門分野の十分な知識と本を書ける筆力がある人は、ライターではなくて既に著者になっているのかもしれない。

 では、専業の著者になるのではなくても、現在副業を行う余裕があって、知識と筆力・国語力がある人材は、企業に多く埋もれているのではないだろうか。

 ライター以外にも、コンサルタントでも教師でも、同種のミスマッチがある仕事は少なくないのではないだろうか。副業には大きな可能性があるように思える。

副業としてのオンラインライター
仕事の進め方をシミュレーション

 例えば、金融機関に勤めていて文章を書くことが得意な社員が、ライターの副業を志して、著者と一緒に「お金」の扱い方をテーマとした本を作る仕事に取り組むとすると、どのような具合に仕事が進むか。

 まず、編集者が著者に企画を持ち込んで、著者がその気になる。この場合「お金」をテーマとした本を作ることで合意したとしよう。編集者が副業ライター氏のことを知っていて、彼・彼女を起用しようとして、著者が了承したとする。ライターは金融業界に勤めているので、金融関係の用語の意味がよく分かるし、分からない場合でも調べる際の勘所が分かっているはずだ。著者は話がしやすいと期待される。