NISA口座では利益を出しても、損失を出しても、
税制ではカウントされない

 また、仮に株式投資で50万円の損失が生じたとします。これが課税口座の場合だと、損失は最長3年間、繰越控除できます。

 どういうことかというと、損失が生じた翌年を1年目として、その年の利益が20万円だとすると、それが前年の50万円の損失と相殺されて利益がゼロになり、それでも相殺し切れなかった30万円の損失額を、2年目の利益と相殺させることができます。

 それでもまだ相殺し切れない時は、3年目の利益とも相殺できるのです。この繰越控除の制度が、つみたてNISAでは認められていないのです(前図下段)。

 このように、損益通算と繰越控除が認められていないのは、つみたてNISAでは損失が生じないものという前提で成り立っている制度だからです。

 20年という長期にわたって積み立てていく制度ですから、目先で生じた損失との損益通算や繰越控除は、ほとんど意味がないということで、これらが認められていないのだと思います。

 いずれにせよ、つみたてNISAの口座では利益を出しても、損失を出しても、税制ではカウントされないわけです。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信代表取締役会長CEO
一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事
1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2020年6月より現職。つみたてで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言。国際分散型投資信託2本を15年以上運用し、個人の長期資産形成を支えている。客観的な定量評価を行う「R&Iファンド大賞」最優秀ファンド賞を9年連続受賞。口座開設数16万人、預かり資産5000億円を突破。
主な著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』(以上、ダイヤモンド社)他多数。