今のところソニーのセンサービジネスは、グローバルナンバーワンを目指すため、しっかりとした生産設備への投資を行っているように見える。しかし油断をすれば、すぐに韓サムスンに追いつかれてしまうかもしれないし、そのためにもセンサーの次の事業を育てていく必要がある。

 この先10年のパナソニックとソニーは、何をする会社なのか。また、その事業でグローバル展開できるのか。これは両社が現在課せられた宿題だろう。

 国内でしか売れない商品をつくっても、パナソニックやソニーほどの規模を持つ企業は経営を維持することはできない。グローバルに何の会社になるのか、持株会社制への移行によって事業形態が複雑になった今こそ、ステークホルダーを納得させる方向性をしっかり示すことが両社に求められる。

ソニーとパナソニックが
肝に銘じるべき逆転の発想

 やはり、求められるのは「水道哲学」である。「安かろう、悪かろう」を売るのではない。安くつくって大量に売ることで、少量の高いものをつくるための原資をつくる。それが今日の「水道哲学」の意義であろう。

 パナソニックもソニーも、今よりさらに規模を縮小したいのであれば、販売数量を減らし、規模に見合った中堅メーカーになればよい。しかし、多くの社員とその家族、両社を支え日本に数多く存在するサプライヤーのことを考えれば、規模を負うことも重要であるし、規模を追えば規模の経済性のメリットが享受できる。

 米中貿易摩擦や、ロシアのウクライナ侵攻とそれを容認する中国に対して、世界は厳しい目を向けている。IoTとはあらゆる家電製品に通信機能が入り込むということだ。基地局設備は米国でも英国でも、ファーウェイを排除する方向にある。しかし、クライアント機器が中国製であれば、そこが抜け道になるのは当然のことである。日本の防衛省でもレノボのPCを使っているという話を聞いたが、それこそ日本のパナソニックの「レッツノート」が全官庁の標準PCになってもいいはずだ。経済安全保障は日本のエレクトロニクス企業にとって、大きなチャンスとなる。

 今こそ反転攻勢に出て、世界で規模を追い求めるときではないだろうか。

(早稲田大学大学院 経営管理研究科 教授 長内 厚)