1月22日、米国のFRB(連邦準備理事会)は、月末に予定されていた会議を待たず、緊急の電話会議によって政策金利(フェドファンドレート=わが国の無担保コール翌日物に相当)を0.75%引き下げることを決めた。

 緊急利下げは、2001年のテロ発生時に行なって以降約6年ぶりのことだ。今回の措置の背景には、サブプライム問題の拡大に伴い、金融市場の動向が不安定な展開を示していることに加え、実体経済への悪影響が増幅していることがある。FRBが、電話会議による緊急金利引下げを決断せざるを得ないほど、事態が深刻になりつつある証拠ともいえる。

後手に回った金融政策

 今回、FRBが異例の金融利下げに追い込まれた主な理由は2つある。

 1つは、金融政策の運営が後手に回ったことだ。元々、FRBは、昨年夏のサブプライム問題の顕在化時点では、この問題を過小評価していたふしがある。サブプライムローンの残高は、高々1兆数千億ドル程度で、それも全額焦げ付くとは限らない。米国の経済規模から見れば、その影響は軽微と見たのだろう。

 ところが、サブプライムローンは証券化の手法によって、世界中の投資家に分散しており、最終的に、どこの誰が、どれだけの住宅ローン債券を保有しているか分からないという状況が、徐々に浮かび上がってきた。そうなると、「某大手金融機関が、保有する当該債券から多額の損失が発生している」という観測が、金融市場内で飛び交い、結果的に世界的な信用収縮にいたる懸念も現実のものとなった。そこで、FRBは慌てて金融緩和へと舵を切ったのだが、事態の悪化に追いつかず、結果的に、「Too Little Too Late」の後手を踏むことになってしまった。

 もう1つのファクターは、そうした事態を打開するために、金融市場にサプライズ効果を与えること以外に有効な選択肢が残されていなかったことだ。

 後手を踏んだ金融政策を、足許で発生している事態に合わせるためには、どこかで思い切った政策を打ち出すことが必要だった。そこで、電話会議の決議によって、0.75%の大幅利下げを実行するという荒業を繰り出すことになったのだろう。こうした一連のFRBの政策運営については、その決断を評価する声がある一方、一部の専門家からは、「FRBは、金融市場に対するコントロール機能を失っている」などの批判が出ている。

実体経済への波及で
米国経済は後退局面に

 今後の焦点は、金融政策がどれほどの効果を発揮するかだ。FRBのバーナンキ議長は、金融政策だけではなく、政府の財政政策と協調体制を組むことによって実体経済の後退を防ぐ考えを明らかにしている。