「ネトウヨかパヨクか」二元論の危うさ、安倍元首相の銃撃事件でSNSは混乱写真はイメージです Photo:PIXTA

140文字の文章の中では、どうしても分かりやすさが優先される。単純な二元論で示される分かりやすさに、私たちは長らく逃避していたのではないか。(フリーライター 鎌田和歌)

安倍政権の時代と重なるSNS興隆期

 安倍晋三元首相を狙った銃撃事件が、列島を激震させた。あってはならない最悪の暴力によって命を奪われた故人の冥福を祈るのは当然のことであるのは前提として、この原稿では、事件以降とそれ以前では変わらざるを得ないように見えるネット上の世相について言及したい。

 2010年代以降の日本において、良くも悪くも圧倒的な存在感を持っていたのが安倍元首相だろう。数年ごとに首相が代わるのが当たり前だった日本において、歴代最長の在任期間だった。そして熱烈に支持される一方で、安倍元首相自身が「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と応戦したように、激しい反感を持つ人も少なくなかった。

 コロナ禍でその座を退いてからも、現職の首相よりも支持されているように見えたし、同時に怒りの矛先を向けられてもいた。

 安倍元首相の在任期間である2012年12月から2020年9月は、ネット上でSNSが盛り上がり、ハッシュタグ文化が生まれた時期と重なる。特にツイッターで、有名無名の個人が発信することが当たり前となった。

 近年、政治的なイシューについては、右派・左派という二項対立でくくられやすくなっているが、現実はそう分かりやすくない。そのことに、今回の銃撃をきっかけに、多くの人が徐々に気づき始めているのではないか。