何かと気分が沈みがちで、仕事へのモチベーションも上がらない。いつも前向きに頑張っている同僚と話すと、うらやましいと同時に、なぜあんなふうに気分良くしていられるのか不思議でならない。そんな疑問を口にする人がいる。実は、そこには「記憶」が深く関係しているのである。(心理学博士、MP人間科学研究所代表 榎本博明)
今の気分は「記憶」によるところが大きい
記憶というと、記憶力の衰えとか、記憶力の高め方とかを連想する人が多いのではないだろうか。もちろん、記憶力についてもさまざまな研究が行われているが、私たちの生活のさまざまな局面で記憶が重要な役割を担っているということは、あまり意識されていない。
実際、書店に並んでいる記憶関係の本も、どうしたら記憶力を高められるかといった類いのものが圧倒的に多く、そうした本が売れ筋となっているようだ。
だが、記憶は、私たちの生活にうるおいを与えてくれる重要な役割を担っている。過去を懐かしんだり、未来を夢見たりできるのは記憶のおかげである。本を読み映画を見て、懐かしい思いに浸ったり、感動し、ときに涙を流したりする。これは記憶を通して、自分の過去の経験と重ね合わせることができるからだ。