私が監督になってまだ7年目なので、卒業生は25歳前後。かつての慶應義塾大学卒業生が進むことが多かった道とは、異なる選択をする人も出てきています。弁護士や公認会計士といった士業につく者がいれば、ベンチャー企業に入る者もいる。医大に入って学び直ししている者もいる。自分で身を立てていこうとする卒業生が増えている印象ですね。それがすべてではないですが、ここでの3年間で良い学びを得てほしいです。

主体性をもって野球に携わるために
ボトムアップも必要

これからの高校野球には、指示を無視して成果を出す選手こそが必要な理由

 慶應義塾高校野球部では、学生コーチがリードしたり、選手同士が話し合ったりする場合があります。選手同士ができる限り、気づいたことを伝え合えるようにしています。トップダウンでの指導だけではなく、彼らが主体性をもって野球に携わるためにボトムアップも併用。ですので、監督と選手は同じ目標に向かって走る仲間なんですね。

 仲間ですから、「もう少しこの部分の練習がしたい」といった提案も出てくるんです。指導する立場ですから、厳しくする場合もある。ですが基本的には、ドローンで斜め後ろからグループを見て、羊飼いが全体をコントロールしているイメージです。

森林貴彦(もりばやし・たかひこ)/慶應義塾高校野球部監督。慶應義塾幼稚舎教諭。1973年生まれ。慶應義塾大学卒。大学では慶應義塾高校の大学生コーチを務める。卒業後、NTT勤務を経て、指導者を志し筑波大学大学院にてコーチングを学ぶ。慶應義塾幼稚舎教員をしながら、慶應義塾高校コーチ、助監督を経て、2015年8月から同校監督に就任。2018年春、9年ぶりにセンバツ出場、同年夏10年ぶりに甲子園(夏)出場を果たす。

*「森林貴彦・慶應義塾高校野球部監督に聞く(4)」に続きます。