経済制裁の負担とともに
ウクライナ支援に疲弊する各国

 今のところ、EUやアメリカのロシア制裁のスタンスは一致団結しており、崩れる様子は見せていない。ただ、ウクライナ支援の先頭を走っていたイギリスのボリス・ジョンソン首相が辞意表明したことで、イギリスが今後もウクライナ支援をけん引するかどうかは不透明になっている。

 また、アメリカ、ドイツ、イタリア、フランスなどいくつかの国では、どこまで続くかわからないウクライナ支援を抑えるべきだという政府の方針に反する動きも出始めている。

 経済的に疲弊している点は西側もロシアと同じで、ウクライナのゼレンスキー大統領が停戦に後向きで、戦争続行の意欲を衰えさせていないことが、西側を不安に陥れている面もある。特に、EU各国は一部を除き基本的には経済規模が小さい国が多く、対ロ警戒でこれから防衛費を引き上げなければならない上に、ウクライナ支援に財政を出し続けなければならないという状況に不安を抱き始めている。

 つまり、経済制裁による負担とともに、ウクライナ支援の負担が重なっていることが不安材料となってきているわけである。

 それに対して、ロシアは選挙制でありながら完全トップダウンの独裁制に近く、戦争継続が民意でできなくなることは考えにくいが、西側については民意で支援が継続できなくなる可能性は依然として残っている。経済制裁は確実にロシア経済に効いてきているとはいえ、「時間がロシアを追いつめる」という西側の理想的な状態には程遠く、かつ時間に追いつめられている点では西側も同じだ。

 ロシアがさらにガス供給を減らせば、ヨーロッパ経済はそれなりのダメージを受けることになる。特に冬の厳しさ次第では、凍死者が出る可能性もないとはいえないほど、この冬のエネルギー危機は予断を許さない。