「心が限界のサイン」を見極めるための危険信号
――本当に限界まで追い詰められていたんでしょうね。芸能界に限らず、最近は過労で動けなくなってしまう人が多いと聞きます。「心が折れやすい人」の共通点や、メンタルが限界になったときのサインなど、見極めのポイントがあれば教えてください。
カジサック:そうですね……。まず、自分自身を振り返ってみると、ちゃんと相談できていなかったことが大きかったのかなと思います。変に格好つけちゃってたんですよね。まだ若かったこともあってプライドもあったし、自分の気持ちを蔑ろにしてしまっていた。何気ないことかもしれないけれど、「まあ、いいや」という言葉が言えること、そう言える環境をつくることがどれだけ大事か、痛感しました。
――「まあ、いいや」という言葉を言えること。
カジサック:やっぱり、ボクみたいに、普段は明るくて、ある日突然、急にポキッと折れてしまうような人って、「まあ、いいや」の一言が、他人に対しても、自分に対しても言えないんだと思うんですよ。もともと無理しやすくストイックな性格だとか、あるいは、仕事上、なかなか言い出せない立場にいるとか、「周りに迷惑をかけちゃいけない」という気持ちが強すぎる、とかね。ボクの場合は、とことん自分を追い詰めてしまうタイプで、いつも自分自身に対しても、「何がダメだったんだろう」と責めることしかできなかった。あそこで「まあ、いいや」と自分に声をかけられていたら、きっと失踪することもなかったんじゃないか、と思うんです。
メンタルダウンの経験を通して、人に相談し、「大丈夫だよ」と言ってもらえてようやく「なるほどね。たしかに、まあいいか」と思えそうな気がしてくる。ボクはそういうタイプなのかもしれないと、気がついたんです。
――なるほど。自分で言えないからこそ、他人に言ってもらう、と。
カジサック:そうですね。だから、「まあ、いいや」と言えるようになるためには、どうしたらいいだろう? と考えるようになりました。「まあ、いいや」となかなか思えないときは、なるべく早めに誰かに相談する。同時に、ボクは「自分との打ち合わせ」と呼んでいるんですけど、一人でじっくり考える時間も大事にしています。毎日寝る前に、Yogiboやベッドに寝転がりながら、ただボーッとあれこれ考える。明確な答えを出す必要はないんですよ。
「おい、ちょっと無理してんのとちゃうか?」
「つらくなってへんか? ほんまにやりたいことをやれてる?」
と、自分に問いかけ続ける。人に相談することと、自分との打ち合わせ。この二つの組み合わせで、ボクは「これ以上やったら絶対自分はダメになる」という境界線みたいなものが見えるようになりました。自分をコントロールするのがうまくなりましたね。
――「限界のサイン」は、どんな思考・行動としてあらわれることが多いですか?「こうなったらちょっと休もう」と思うのは、どんなときでしょうか。
カジサック:いちばんわかりやすいのは、ふとしたときにストレスのことを考えてしまうこと。これは、かなりの危険信号だと思っています。自分との打ち合わせのときに反省したり、「今度のあの仕事、どうしよかな」と考えたりするのはいいと思うんですけど、そうじゃないときに気がつけば考えてしまっている状況は、限界に近いのかもしれないですね。「明日、あれやりたいな」とか、ポジティブなことならいいと思うんですが、「ああ、しんど」みたいなネガティブな言葉が、何も意識していないときにふっと浮かんでくる。ボクが失踪する直前は、そんな状態がずっと続いていましたね。
がんばって働いていると、どうしても無理したり、周りに合わせようとしてしまったりする。それはしょうがないことだと思います。でも、いま何かを変えたい、どうしてもここから抜け出したいという思いがあるのなら、ボクみたいに限界をこえる前に、一度立ち止まってみてもいいのかもしれません。
本には、失踪期間中に考えていたことや、立ち直るためにしたことについてもかなり詳しく書いているので、大変な思いをしている人にとって、何か少しでもヒントになれば、こんなに嬉しいことはないですね。
【大好評連載】
第1回 「いくら努力しても報われない環境」から抜け出すたった一つの方法
第2回 【カジサックが明かす】初対面でもつい心を開いてしまう「3つの聞き方」
第3回 【カジサックの5人子育て】子どもの「考える力」を奪うたった一つの言葉
1980年大阪府岸和田市生まれ。漫才コンビ・キングコングのボケ担当。相方は西野亮廣。吉本興業所属。
「カジサック」として2018年10月1日Youtuberデビュー。
カジサックの部屋に様々なジャンルのゲストの方を招きながら、バラエティに富んだ動画を配信している。登録者は200万人を超える人気YouTuber。