では、どのような人が医療費の自己負担金などの減免措置を受けられるのか。減免措置を受けられるかどうかは、その人の被災程度によって判定されている。2011年3月11日に起きた東日本大震災では、次の要件を満たす人が対象となった。

●東日本大震災で一部負担金が無料となった被災者の要件
 災害救助法が適用された市町村の住民で、国民健康保険、後期高齢者医療制度、協会けんぽ、一部の健保組合・国保組合の加入者(その扶養家族も含む)のなかで、次のいずれかの要件に当てはまる人。

(1)住宅が全半壊、全半焼またはこれに準ずる被災をした人
(2)主たる生計維持者が死亡または重篤な傷病を負った人
(3)主たる生計維持者の行方不明の人
(4)主たる生計維持者が業務を廃止・休止した人
(5)主たる生計維持者が失職し、現在、収入がない人
(6)東京電力福島第一原発の事故に伴う政府の「警戒区域」「計画的避難区域」および「緊急時避難準備区域」に関する指示の対象になっている人

 この要件を満たしていれば、災害の発生後に被災地から他の市区町村に住所を移した場合も免除対象になった。病院や診療所での一部負担金のほか、保険薬局・訪問看護などに支払う自己負担分も免除された。また、介護保険の利用料についても免除対象となった。

 ただし、免除対象になるのは健康保険が適用されている治療費や薬代などで、個人の希望で使った個室の料金、健康保険の利かない先進医療の技術料などは免除の対象外だった。また、入院時の食事代、介護施設等の居住費なども無料にはならなかった。

 このように、かかった医療費のすべてが無料になったわけではないが、健康保険が適用されているものはおおむね無料になった。

 また、東日本大震災では、当初の免除期間は2011年5月末とされていた。だが、被害が甚大で、原発事故による複合災害もあったため、なかなか被災者の生活再建が進まなかった。そのため、一部負担金の免除期間は延長が繰り返され、国による一律の支援は2012年2月末まで続いた。

 さらに、これ以降災害時に医療費無料の措置を受けられる人は、東日本大震災の時に適用された減免措置と同様の制度が踏襲されてきた。2016年の熊本地震、2019年の台風被害など、大きな災害が起きた時にも同様の措置が取られている。

 今回は、一部負担金への国による一律の支援策は今のところ打ち出されていないが、一部の健康保険組合では、被災者への減免措置を表明しているところもある。また、都道府県の国民健康保険では、一部負担金の免除のほかに、要件を満たした被災者の健康保険料の減免を打ち出しているところもある。

 大きな災害を受けて、病院や診療所での窓口負担の支払いが厳しいという場合は、まずは自分が加入している健康保険に救済措置があるかどうかを問い合わせてみよう。

 被災して医療費無料の要件にあてはまっているにもかかわらず、自己負担金を支払ってしまった人は、健康保険組合に申請すると還付を受けられるので、忘れずに手続きしよう。