救護所や避難所で受けた医療は
災害救助法に基づいて行われる

 一方、災害時には通常時に提供される健康保険法に基づく医療とは異なる制度に基づく医療が提供されることもある。

 大きな災害が起こると、国の災害派遣医療チーム(DMAT)や日本赤十字社の医療チームなどに被災地への派遣要請が行われる。こうした医療チームが、救護所や避難所などで行う応急的な医療行為(診療、薬や治療材料の支給、処置や手術その他の治療および施術、病院や診療所への収容・看護など)は、健康保険法ではなく、災害救助法に基づいて行われている。

 救護所や避難所などで受けた治療や看護、医薬品や治療材料などの費用は、公費負担で国から救護班に支払われることになっており、患者に自己負担分が請求されることはない。

 救助期間は、原則的に発災当日から14日以内(災害の混乱が収まらない場合は、適宜延長される)。救護所や避難所で受ける医療は、発災直後の混乱を一時的にカバーすることを目的としており、緊急性の高い治療が優先される。持病の治療や予防的な医療など、原則的に緊急性の低いものは治療してもらえないが、発災直後の混乱期に救護所などで受けた医療は、おおむね公費負担の対象となると考えていいだろう。

 今回の大雨で印象に残ったのは、「何十年も住んでいるけれど、こんなことは初めて」という被災者の言葉だ。

 このところ、日本では、異常気象によって、毎年どこかで地震や大雨などの自然災害が発生している。そして、これまで災害とは無縁と思われていた地域でも大きな被害を受けており、警戒が必要になっている。気候変動の影響が懸念される今、自然災害の被災者となる可能性は誰にでもある。

 避難経路の確認や非常持ち出し袋の準備とともに、医療費の特別措置についても、災害への備えの一つとして覚えておきたい。