有名テック企業からの入隊希望が
後を絶たない理由

「IT敗戦」と呼ばれる日本の状況のなかでも、特に深刻なのが、ソフトウエアエンジニアの不足である。

 絶対数が足りないうえに、開発方法や技術がアップデートされておらず、世界で主流の手法である、アジャイル開発やTDD(テスト駆動開発)ができる人材が少ない。

 コードクリサスの受講者の顔ぶれも、それを裏付ける。充実した教育カリキュラムを持つはずの大企業の現役エンジニアなどが、シリコンバレー流のソフトウエア開発を学ぼうと、大勢参加しているのだ。

 授業は平日の昼間が原則で、みっちり3カ月かかるので、会社員をしながらの受講はむずかしい。そのため、企業を退職してブートキャンプに参加する人も少なくない。

 このまま会社にいても世界とのギャップは大きくなるばかりで、エンジニアとしての未来は見通せない――。そのような焦りが、彼らを突き動かしているのかもしれない。

 ある大手IT企業では、技術者の急な退職が重なったので、退職者に理由を聞いたところ、コードクリサリスの存在が浮上。検討の末、ブートキャンプ参加中の休職を会社として認めることにした、というエピソードもある。

カニ氏Photo by HK

 企業からの派遣や、社員研修の依頼も増えているという。

「ユニコーン企業から日本を代表する大企業まで、業種や規模もさまざまです。ブートキャンプの卒業生が次々と入社し『どうやらあそこのブートキャンプがすごいらしい』とうわさになり、声をかけていただくパターンがほとんどです」

 背景には、企業側がシステム開発や運用を外部に委託せずに、社内のエンジニアによって内製化するという流れが影響している。外部委託ではなく内製化することで、急激な市場の変化や技術の進化にもスピーディに対応できるし、知識やノウハウも蓄積される。即戦力のソフトウエアエンジニアは、多くの企業にとって喉から手が出るほど欲しい人材なのである。

 しかし、ブートキャンプで身に付くのは技術スキルだけではなかった。