メインバンク制、土地担保、株式持ち合い…
「影」が目立つ昭和の金融の意外な利点
映画「三丁目の夕日」で描かれる昭和は美しい。人情味があり、経済にも活気がある。しかし、殺人、強姦、交通事故死は、今よりはるかに多く、野蛮で危険な時代でもあった。
時代には光と影がある。今から振り返ると、昭和の金融は「影」ばかりが目立つ。料亭の女将が、多額の融資を背景に株式投資をして破綻するなど、非常識な事件が頻発した。
しかし、本稿では、敢えて「三丁目の夕日」的に、昭和の金融が持っていた利点に焦点を当てる。意外なことに、社会的な情報コストという観点から考えると、利点は小さくなかった。
企業金融の手法は、Debt(借入)とEquity(資本)だ。昭和の特徴は、前者がメインバンク制や土地担保融資、後者が株式の持ち合いだ。いずれも今では、すこぶる評判が悪い。