遺言の最大の欠陥とは?
遺言の決定的な落とし穴は、全相続権者に、あなたの子どもたちに対する査定内容が公開されてしまうことです。下手に遺言に書き残してしまうと、そのことが相続権者全員の知るところになってしまうので、分け前がいちばん多くなる子どもは、その他の全員からねたまれることになり、立場が悪くなります。裁判沙汰になる場合さえあります。
もし子どもたちの受け取る金額に差をつけたいのであれば、その差額相当のお金を、他の子どもたちには悟られぬように生前に渡してしまう必要があります。おそらくいちばん思い入れの強い子どもには老後の支援を頼むことが多くなると思うので、その経費という位置づけで、あらかじめお金を渡してしまうのです。金額のイメージとしては、実際にかかる経費相当分以上にお金を先渡しすることをお勧めします。
逆に、特定の子どもに事前に予算を与えることもせずに老後の支援だけを頼むというのは、いかがなものでしょうか?特に、認知症をはじめとする医療・介護関連の支援は労力的に煩わしい上、長期間にわたる場合がほとんどです。仕事に家庭に多忙な子どもの立場に立てば、老親サポートに必要な財源を明確に示し、かつ、先渡ししておいてくれないと困るはずです。予告も予算もないままに介護を担った子どもの多くは、介護を終えた後(親の死後)、親に対するネガティブな記憶と感情が刻まれてしまうものです。これはとても悲しいことです。
面倒を見てくれる子に先にお金を渡しておけば、あとは親が死んだ後、銀行が出てきて遺産分割協議を執り行い、預金残高を人数割りして全員が同じ金額を受け取るという流れになり、遺言は不要です。均等割りの旨を(特定の子に差額分を先に渡してしまった後のタイミングで)子どもたちを集めて宣言しておくのもスッキリしていいかもしれません。
遺言を書かず、意図通りに財産分けする方法
遺言を書かず、子どもたちの間に無用な争いを起こさないためには、どうすればいいのでしょうか。
答えは簡単です。あなたが元気なうちにA、B、Cの査定をして(人事評価と同じです)、自分の言葉できちんと個別に伝えるのです。
「こういう理由で、○○円をキミに残すからね。他の2人より多くなっているけれど、それはキミがサポートしてくれたことへの対価だから」
例えばこんなふうに伝えるだけ。これだけでいいのです。子どもたちを一堂に集めて全貌を話す必要などまったくありません。
遺言を書き終えた後、あなたがこの世を去るまでの長きにわたって、財産分けについてのあなたの意向を後生大事に隠しておくなどナンセンス。文字通り、何の意味もありません。むしろ、今のうちからしっかりと思いを伝えるべきです。