――軍事力による作戦体系だけではなく、政治、経済、法律、世論等を含む戦争体系を含んだ、全ての要素と全ての体系からなる体系の対抗であり、戦争の勝敗は、システム機能の高低で決まる――

 この「全領域戦」の考え方こそ、相手国を根底から揺さぶろうとする現代の戦争の指針となるものだ。

 中国が台湾や尖閣諸島の統一に動き出すなら、ほぼ間違いなく、情報戦で政府や国民心理を混乱させ、サイバー攻撃、電磁波攻撃、そして宇宙からのセンサー攻撃などでダメージを大きくする戦法を取ってくる。

 当然、偽情報も大量に発信することが予想されるため、それらを分析し、正しい情報に変換して発信する「認知領域」の人員拡充も急務となる。

 防衛省は、サイバー、電磁波、宇宙の3領域に加え、新たに「認知領域」での補強を目指し、そのための予算を概算要求の「事項要求」に盛り込もうとしているのである。

中国や北朝鮮に比べて
あまりに貧弱なサイバー部隊

 日本の場合、現状では「全領域戦」への備えは十分とはいえない。その代表格がサイバー戦への備えである。

 自衛隊にサイバー専門部隊が設けられたのは2014年のことだ。自衛隊は、サイバー空間への脅威が急速に高まっているのを受けて、陸海空、3つの自衛隊のサイバー関連部隊を再編したが、これは、自衛隊に対するサイバー攻撃から守るための部隊であり、自衛隊以外に対するサイバー攻撃を防衛する任務が与えられていないという欠点が残されたままだ。

 サイバー攻撃の代表的なものとして、国内の電力会社のネットワークや航空管制システムが乗っ取られるといったようなケースが想定されるが、これらの攻撃で標的にされるのは民間企業である。そこへの防護が想定されていないのだ。