「はいチーズ」は消えるのか
もし消えたら、私たちは何を思うのか

  令和は、「はいチーズ」一強時代の終焉(しゅうえん)を迎えつつようである。
 
 そのつもりで筆者も若い人を対象に調査を行ったところ、さらに新たな仮説が生じた。
 
 まず、筆者の調査結果をシェアしよう。

 30代男性は「『はいチーズ』は普通に使いますよ。心配しないでください」との意見がおおむねであった。30代女性は「使う」。20代男女では「『はいチーズ』は知っているが一切使わない」という人が混じってきた。10代には1人しか話を聞けなかったが、19歳の女性は「使います」ときっぱり回答している。
 
 つまり、まあ当たり前の話ではあるのだが、若い世代でも個人によって「使う・使わない」は分かれるようである。
 
 そして、ここからが仮説だ。

 仮説その1だが、20歳前後の若者は写真を撮影する機会が多かろうから、令和式の写真撮影にこなれていくうちにやがて「はいチーズ」を使わなくなるのかもしれない。先の19歳女性も、まだ親の世代が使っていた「はいチーズ」を自分の流儀としているが、青春を過ごしているうちにそれが変化していく可能性がある。
 
 仮説その2は、「『はいチーズ』は古い」と気にしているのは若い人より40歳以上の男女の方に多いのではないか――である。40歳以上には10人程度に話を聞いただけなので統計とするには母数がいかにも心もとないが、少なくともその傾向が感じられた。
 
 実際若い人(20代)による「『はいチーズ』は古い」という発言も聞かれるのだが、「“古い”から恥ずかしい」「“古い”とわかっているけどつい使ってしまう」といったコメントをするのは圧倒的に30歳以上が多い。若年から壮年・中年へと区分が変化していく30~40代はとりわけ自分の年齢に関するあれこれを気にする機会が多く、どうしても“古さ”に過敏になってしまうのではあるまいか。
 
 だから、中・壮年世代は「はいチーズ」の古さを過剰に気にする必要はないのかもしれない。

 冒頭であれだけ「中年は『はいチーズ』を使うとのっぴきならない」といったことをあおっておいた手前申し訳ないが、「『はいチーズ』をおそれすぎなくていい」ということである。生きる上で不安な要素が一つ滅したことは、幸いである(そもそも筆者が冒頭で不安な要素を植え付けて回ったのだが、結果オーライということで、なにとぞご容赦賜りますようお願い申し上げます)。
  
 いつか本当に「はいチーズ」が消滅してしまったら、たとえ疎ましく思っていた「はいチーズ」であっても物寂しく感じられるのかもしれない。
 
 書いていて「はいチーズ」がいとおしく思えてきたが、筆者の主張や考えが1記事内でコロコロ変わり過ぎなので、これ以上お目を汚す前に、この辺で幕引きとしたい。