ローム、タカトリ…「次世代パワー半導体」技術で脚光の日本企業、EVやデータセンターで導入加速!【厳選6銘柄】Photo:PIXTA

AI時代を迎えて増え続ける高性能コンピューターや、普及する電気自動車(EV)には高効率のパワー半導体が欠かせない。次世代パワー半導体の材料となる「SiC(炭化ケイ素)」や「GaN(窒化ガリウム)」は、中長期で確実に市場が拡大する。その製造技術や素材で注目の日本企業6社を業界の目利きが厳選する。(経済ジャーナリスト 和島英樹)

加工難易度が高く“技術の日本”に出番
世界のパワー半導体大手が設備投資を強化

 省エネルギーの鍵を握るパワー半導体。いま、その素材に化合物を使い性能を引き上げる「次世代パワー半導体」の需要が急拡大しており、その製造装置や材料を供給する日本企業への引き合いが強まっている。

 パワー半導体は、電圧や周波数、直流・交流の電力変換などを行う。一般的なシリコン(Si)を使う従来タイプに対し、次世代パワー半導体は、電力の損失が少なく、高い電圧に耐えることができるという特徴がある。

 次世代パワー半導体の素材となる化合物としては、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)が代表的だ。

 中でも実用化で先行するのがSiCパワー半導体だ。EVに活用すると電費(ガソリン車の燃費に相当)が10%改善するといわれる。

 データセンター向けでもSiCパワー半導体の導入が急速に進んでいる。データセンターで使われる無停電電源装置(UPS)にSiCパワー半導体を採用することで電力の損失を大幅に減らすことが可能になる。

 SiC製のウエハーは炭化ケイ素の粉末を熱して作る。真空の容器に種結晶を入れ、2000~3000℃の高熱にして気化したSiCを種結晶に付着させる格好で成長させる。これをスライスしたウエハーの表面に、さらに単結晶の膜を付け、層を形成することで完成する。層の形成をエピタキシャル成長といい、出来た層は「エピ層」と呼ばれる。この技術の確立で量産のメドが立つようになった。

 SiCパワー半導体は、その特性から、EVなどのモーター駆動などの大電圧・大容量の変換で優れた性能を発揮する。

 GaNパワー半導体もSiCと同様、シリコンに比べ高耐電圧、低損失という特徴がある。このため、モーター駆動などの用途で期待されるほか、SiCと比べてスイッチング電源などの小型、高周波用途で有利といわれている。これをデータセンター向けのUPSに採用することで、スイッチングの速度を高め、システムをコンパクト化すれば、データセンター内のスペースを節約できるだろう。

 SiCとGaNには課題もある。炭素からダイヤモンドを合成する際に偶然発見されたといわれるSiCは、非常に高い硬度を持ち、シリコン製にくらべて加工が難しい。一方、GaNは基板が高価である点が課題だ。また、高品質なウエハーの製造工程は複雑になる。コストパフォーマンスに劣る点は、メーカーがビジネス化する際のハードルになる。

 こうした中で、製造技術や素材を供給する日本企業への引き合いが強まっている。パワー半導体で世界トップの独インフィニオン、2位の米オン・セミコンダクターなど大手メーカーがSiCやGaNへの設備投資を強化しており、中長期的に次世代パワー半導体の市場は確実に成長する。

次ページでは、次世代パワー半導体関連の日本企業6社について、それぞれ強みとなるポイントと共に、今期と来期の予想営業増益率を、銘柄表にまとめて紹介する。

ローム、タカトリ…「次世代パワー半導体」技術で脚光の日本企業、EVやデータセンターで導入加速!【厳選6銘柄】